ブラックベリー | ナノ



  05




『あっ森山先輩!』

後ろから聞きなれた声がして俺は思わずげっと顔を顰めた。(逃げても何故かまた見つかるので逃げることは二日目から諦めた。彼女は俺にGPSでも仕掛けているのか?)
その顔を見て偶然一緒に居た黄瀬がえっと声をあげる。
そして俺の背中に小さな衝撃。

『今日もかっこいいですね!こんにちわ!』
「なんで毎日見つけるんだよ…」
『愛の力ってやつですかね!』

ドヤ顔で言われても腹が立つだけなので背中にすり寄せていた頭に肘をぶつけた。

『痛い!痛いです!』
「うるさい」
「森山先輩が女の子を邪険に扱ってる…!?」

信じられない、といった顔をする黄瀬。ああもう…こっちにもうるさいのが居た。

『あれっ、えーっと…谷瀬くん、だっけ?』
「…は?!」

誰だ、谷瀬くん。
この場には俺と黄瀬と発言した本人しか居ないので消去法で黄瀬ということになる。惜しい、ニアピンだ。

「黄瀬っス!」
『あーそうそう!クラスの女の子たちが騒いでたんだけど私森山先輩にしか興味なくってうろ覚えだったんです。ごめんなさい』
「あ、そう…」

仮にも人気モデルである黄瀬。その黄瀬を興味ないで片付けた彼女に黄瀬は呆然としていた。

「俺今をトキメクモデルっスよ…!?」
『私森山先輩の方が好きなんで!ごめんね黄瀬くん!まあ黄瀬くんがちょっと緑がかったサラサラストレートの黒髪になってもうちょっと髪を短くしてピアスをやめてもうちょっと身長削って目を切れ長にして声を変えてくれればちょっとは好きになるかな!』
「もうそれ俺じゃなくね?!」

ていうか身長削るってなんなんッスかー!と黄瀬は喚く。
彼女は俺に抱きつきながらあっ浮気じゃないですからね!森山先輩!と笑顔で言ってきた。いや、心配してないから。

「そもそも誰?!森山先輩の彼女?名前は?」
「違う彼女じゃない。あ、そういえば俺も名前知らない」
「はぁ?!」
『えっひどいです先輩!』

そういえば今まで君とかねえとかしか言わなかった気がする。
ついでに遠慮なしの声をあげた黄瀬に言葉遣いがなってないことを笠松に報告することを決めた俺。

「だって君が言わないんだろ」
『…そうでしたっけ』
「そうだよ」

会えた嬉しさで忘れちゃってたのかもしれません!ってどんな脳してるんだ、この子。

『改めまして如月陽菜です!』
「意味分からん、この二人…」

呟いた黄瀬に俺はつい叫びそうになった。
俺だって意味わかんないよそんなの!!!

 




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