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『先輩が、好きです…っ!ずっと前から、すき、なんです』
言葉を伝えていくのと一緒に涙も零れていく。
先輩の手を濡らしちゃう、なんて思ったけれど止められるものではない。
『先輩のために、可愛くなりたいって、思って』
「うん」
『頑張って、それで…っ』
「うん」
頷いてくれる先輩の声が優しい。
動けばおでこを触れそうな距離で先輩は聞いてくれている。
こんな滲んだ視界じゃ、だめだ。赤くなってしまうけれど目を擦って少しでも視界を晴らす。
思った以上に先輩の顔が近くて少しびっくりしたけれど。
『好き、です…。すき、森山先輩が好きです。どーしようもないくらい、好きなんです…』
「…うん」
森山先輩の顔が綻ぶ。そしておでこ同士をぐりぐりと合わせる。
「俺も好きだ。部活にも影響出ちゃって、ほんとどうしようもないくらい好きだ。だから、俺と付き合ってください」
『はいっ!』
用意していた返事で私は森山先輩に抱きついた。
そして一拍遅れて森山先輩が私をぎゅっと抱きしめた。
「…で、なんで俺は避けられているんでしょうか」
ずーんと後ろから擬音が聞こえそうなテンションで言われたが俺の知ったこっちゃねえ。
「付き合ってんだろ、いいじゃねえか。如月の好きにさせてやれよ」
「良くない!!笠松は分かってない!普通付き合って一週間とか二週間ぐらいはラブラブであるはずで決して避けられるなんてことはない!!」
「まあまあ落ち着いて」
ぎゃんぎゃんと喚く森山を小堀が苦笑いで宥める。
ていうかそんなの俺らが知ってるわけないだろ、と言えば森山が「笠松が繊細な乙女心を理解してるなんてこれっぽっちも思ってない」とまあ事実と言えば事実なのだが言われるとそれはそれで腹立つわけで。
「ぶっ飛ばすぞてめえ」
「もうぶっ飛ばしてるんだけど!?」