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  26




五分ほど経って戻ってきた高尾は「いやーほんと困っちゃうわー。中学から俺のことがすきとかもーやだわー、俺紗月ちゃん居るから駄目だって言ってるのに迫られてましたてへぺろ!」と宮地にノンブレスで言っていた。
男がてへぺろってなんだ、可愛くないぞ。

『息吐くように嘘つかないでよ!』
「えー?照れんなって!」
『宮地先輩殴っていいですよね!』
「よしきた俺に任せろ」
「すいませんでした!!!」

なんと早い土下座だろうか。それでも宮地はその脳天に手刀を降していたが。ドゴォッと音がしたが多分気の所為だろう。
床に突っ伏して悶絶する高尾と背中に足をのせていた宮地に大坪が集合をかける。

「宮地、高尾解散するから集合!」
「はい!…じゃ、如月ちゃんまた今度メールすっから!」
『うん!またね!』

如月が体育館から出ようと体をこちらに向けたことでばちりと目があった。
如月は一瞬視線を彷徨わせてなにか言おうと口を開く。

「森山」

後ろから声をかけられて顔がそっちへ向く。
笠松が「こっちも集合だぞ」と言って監督の方を指していた。

返事をして、それからもう一度如月の方へ目を向ければ如月はびくりと体を揺らしそれからぎこちない笑顔を作った。
………なんだ、それ。



『あの、森山先輩!』
「…どうかしたか?」

いつの間に、俺の後ろに居たんだろう。
体育館を出て部室へ向かっていると如月に呼び止められた。
如月は『あの、』と焦ったように口を開く。

『高尾くんとは中学の同級生で…それで、あの、好きな人とか、』
「悪いけど、」

如月の言葉を遮るために、俺は声を出す。
思った以上に冷たい声が出て自分でも驚いた。

「今疲れてるんだ」
『あ…。そう、ですよね…ごめんなさい』

それにさ、と言葉を続ける。
如月の顔が凍ったように固まった。

「中学から好きな奴居るんだろ?それは俺じゃないよな。だってお前と俺は中学違うんだから」
『そ、れは』
「好きって言ってくれたのは嘘だったのか?それとも、俺なら誰とでも付き合ってくれると思ったのか?」

如月の目が大きく見開かれて、薄い水の膜を張っていく。
それでも投げつける言葉は止まらない。

「頼むから、もう近付かないでくれ」

きっぱり言い切った俺に聞こえたのは、『ごめんなさい』と震えた声。
一瞬ちらりと見えた顔は泣きそうな顔をしていて、思わずごめんと口走りそうになったがその前に如月は俺に背を向けて駆け出していた。
小さくなっていく背中を追いかけることは出来なかった。

 




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