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んあ、と両腕を伸ばして欠伸をする。
あー…よく寝た。眠たい目を擦っていると視界の端でチカチカと携帯のLEDが光っていた。

『メール…?』

誰だろう、こんな時間に。時計を見れば朝の七時過ぎだ。
こんな時間にメールしてくる人は…って、

『森山先輩!!!!!!?』
「陽菜うるせええ!!!」

下からお兄ちゃんの怒声が響いた。


『おまっ、たせしました!!!』
「別にそんなに待ってないから、とりあえず落ち着いてくれないか…」

森山先輩のお言葉に甘えてその場ではあ、と一つ深呼吸。

「悪いな、いきなり呼び出して」
『いえいえ!森山先輩に呼ばれれば例え火の中水の中あの子のスカートの中!』
「ぴかちゅう」
『先輩超かわいい!』

如月のツボが分からない、と頭を抱えた先輩の横で私は顔を覆って襲い来る萌えに耐えていた。
テンションが高くならないわけがない。なんてったって森山先輩からのお誘いだ。なんだこれ、夢か。

「………何やってるんだ」
『いえちょっと現実かどうかをですね…』

頬を抓っても叩いてみても目の前の先輩が居なくなることはない。現実だ…!!
森山先輩は哀れんだ目で「変なことしてないで行くぞ」と歩き出した。


「暇だったんだ。インハイ翌日ってことで休日になったんだよ。…それで、お前と一応約束してたなと思って」

言い訳のように呟いたそれに如月はストローから口を外してこう答えた。

『…先輩それで私を誘うとかさては友達居ませんね?!』
「居るけど?!…なに、誘われるの嫌だったのか」
『いえまったく滅相もないです!!』

首吹っ飛ぶんじゃないか、という勢いで首を横に振る如月。
俺が止めると乱れた髪を直して『失礼しました』とはにかんで笑った。

『明日からは通常の部活ですか?』
「ああ。あーでも…明後日は秀徳との練習試合だったかな」
『しゅーとく…。あ、もしかして東京の秀徳高校ですか?』
「そうだけど…知ってるのか?」

如月が強豪校とは言えど、他校の高校を知っているのは意外に思えた。

『ああ…えっと、中一のときに東京に居たので』
「あー…前にもそんなこと言ってたな」
『先輩覚えててくれたんですか…!』
「………今猛烈に思い出したことを後悔している」

…気のせいか、なんだかぎこちない笑顔だったような気がしたけれど。

『それより先輩これからどこ行きます?』
「あ、俺本屋行きたいんだが」
『行きましょう!ええもう行きましょう!』
「どうしてお前そんなテンション高いわけ?」

如月の飲み終わったらしいカップを近くのゴミ箱に捨てに行くと、如月が俺の横に満面の笑顔で並んでいた。

「…どうかしたのか」
『なんだか彼女みたいだなあって!あっいや調子にのってすいません嘘ですごめんなさい!』

謝りながらもその顔からやはり笑顔は消えなかった。

 




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