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『去年はシャツあげたんで、今年はネクタイあげようと思ったんですけど夏にそもそもネクタイって必要ですかね…』
と言いながら青や赤のネクタイを持ち上げながら首を傾げる如月。
どうしよう、普通に大人しい如月が可愛く見える。
『森山先輩?聞いてます?』
「あー…うん、聞いてるよ」
こんなのデートじゃないか、頭のどこかで囁く声が聞こえる。
いやでも、こいつはわのうるさい如月だし…いやでも、如月黙ってたら可愛いし…!
頭を抱えて悩む俺に如月が『先輩そんな悩んでくれるんですね…素敵…!』と呟いていた。あ、如月だ、良かった。
やっと顔をあげた俺の後ろを二人組の女子高生が通る。
ぐりん、と顔をそちらへ動かして確認。おお、…いやちょっとケバい、か…。
「ねーカレシへのプレゼント何が良いかなー?もー百均とかでもいいかな」
「いや流石にばれるっしょ!」
「だって何人にも送るのチョーめんどくない?」
か、会話が怖いんだけど!!何人にもって彼氏何人もいるのか、怖いよ!!
後ろの女子高生の会話にガクブルしていると、腕のあたりをきゅっと握られた。
「如月…?」
『すいません、あの、気分悪くて…出ませんか?』
そう言う如月の顔は心なしか青く感じる。
大丈夫か?と聞けば、はいと弱々しく笑う。
俺は如月を腕に縋り付かせたまま店を出た。
女子高生たちがこちらを見ながら何かを言っていたようだが、多分気のせいだろう。
「大丈夫か?」
ベンチに座らせてスポドリを飲む如月は『はい』と少し良くなった顔色で笑った。
『ごめんなさい、これのお金払います』
「いいよ別に、そのぐらい。さっき奢ってもらったしそれのお礼ってことで」
『…森山先輩ってなんでモテないんですかね。いや好都合ですけどね!』
「言わないでくれる?!結構傷つくんだけど!」
えへへ、と笑う如月にデコピンを一発食らわせたのだが『愛の一撃ですか?!』と逆効果だった。くそ…!
『先輩、帰りましょう!』
「え、良いのか?高橋先輩の誕生日プレゼントは?」
『実は、もう買ってるんです。お兄ちゃんの誕生日プレゼント』
「え?」
ごめんなさい、と如月は言うがちょっとよく分からない。
じゃあなんで俺を誘ったのだろう、と悩んでいると如月が答えをくれた。
『森山先輩とお出かけしたいな、と思ってウソついちゃいました。…怒りました?』
不安げに見上げる如月に、俺は顔を覆って小さく「怒ってない」と答えることしか出来なかった。
ちょっと可愛かったぞ、くそ…!!!!!