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ほんとにこいつ熱八度も超えてんのか、と思うような強い眼差しで見つめられて俺は返事に困った。
誤魔化すようにもう寝ろと強引に如月を寝かせると、すぐに如月は寝息をたてた。


俺にまた明日と伝えたから学校に来た、と彼女は言った。

「(つまり俺に会いに来たってことか…?)」

八度も熱があって?如月って実は馬鹿なのか?と思わずにはいられないその行為に疑問は膨れ上がるばかりだ。なぜ如月は俺のことが好きなのだろうかという疑問が。
考えてみても答えは出てこないし、如月に聞いても誤魔化されるばかりでまさに八方塞がりとはこのことである。

「意味分かんね…」
「失礼しまーす」

結局頭を押さえるしか俺にはできず、その体制で呟いた言葉に被せるように扉が開いた。
振り返れば黒髪の青年が。首からはスタッフパスのようなものを下げている。
明らかにこの学校に人ではない。が、それにしても誰だ。

「陽菜居ます…って森山じゃん」

黒髪は俺の顔を指差し俺の名前を呼んだ。
え、なんで俺のこと知ってんのこの人、流石に男をナンパする趣味はないぞ、俺。

「………誰?!」
「誰って高橋だよ、高橋奏太。お前の先輩の」

叫んだ俺に彼は自分の名前を告げる。

高橋、って………。
そういえばこの声と、顔にはなんとなく覚えがあるような、ないよう………はっ!!

「あの金髪ヤンキーで有名だった高橋先輩?!」
「ぶっ殺すぞお前、ヤンキーじゃねえよ」

すでに言葉遣いがヤンキーっぽいことは言わないでおいた。後が怖いから。

「なん、え、なんで高橋先輩がここに…」
「あー、陽菜の迎え。ってかやっぱここに居たんだな」

俺の前に眠る陽菜を見て高橋先輩は「だから行くなっつったのによ」と呟いて陽菜のおでこにデコピンを食らわせていた。
ドゴォッと音がしたのは気のせいだ。俺は何も聞いていない
そんな超強烈なデコピンを受けた陽菜は起きることなく、高橋先輩は陽菜の腰に腕を回してよいしょ、と抱き上げた。

「んじゃ、俺こいつ連れて帰るから陽菜の荷物よろしくな」
「え?!ちょ、はああああ?!」

家知ってるだろ?とさも当然のように聞く高橋先輩。いや知ってる、知ってるけど!
なんで、先輩に如月との繋がりがあるんだ。

「な、なんで先輩が如月と仲いいんですか…?!」
「あー?あれ、陽菜言ってなかったのか。俺、こいつの兄貴だから」

んじゃ荷物俺の家によろしくな、と高橋先輩は固まる俺を意にも介さず保健室の扉を閉めた。
静まり返った保健室では俺の「…えっ」という間抜けな声が響いた。

 




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