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「あ…」
今日は珍しく部活がなく、早く帰るかーなんて思って窓の方へ顔を向ければ生憎の雨。
そういえば一週間前から梅雨入りしたんだっけか。
そして梅雨入りしたことを知っていたはずなのに俺の傘がない。…いや忘れただけなんだけど。
もう少し待ってたら笠松か小堀が来るかなー、…って何が楽しくて男と相合傘しなきゃいけないんだ…!どうせなら可愛い彼女としたい!いないけど!!!
玄関先で一人頭を抱えていると、念願の女の子の声がかかった。
『森山先輩!何してるんですか?』
「お前かよ…!!」
頭を抱えた次は頭を押さえる。
森山先輩ひどい!なんて言いながらにこにこしてる如月。相変わらずこいつの頭の中は分からない。
『帰らないんですか?』
「………帰れないんだよ、傘忘れたから」
『あ、じゃあこれ良かったら使いますか?』
そう言って如月が差し出したのは水玉の折りたたみ傘。
『柄もそんな派手じゃないし…良かったら、』
「でも、如月の傘は」
『私このあとちょっと用事あるんで大丈夫ですよ!それに置き傘もばっちりです!なので森山先輩が使ってください!私の愛しのスイートハニー森山先輩が風邪ひくなんて耐えられません…!!』
「あ、そう………」
最後のセリフさえなければ良かった。ほんとに最後のセリフだけなければ…。
「じゃあ、悪い。借りていく」
『はい!先輩また明日!!』
如月は俺が見えなくなるまでぶんぶんと手を振っていた。
あいつ元気だな…。
『ただいまー!おにーちゃんタオルー!!』
「おかえり…って、びしょ濡れじゃねーか!」
リビングから顔を出したお兄ちゃんが私の姿を見てめを丸くする。
そうして風呂場からバスタオルを持ってきて私の頭にかける。
「お前傘持ってなかったっけ」
『貸しちゃった』
「…なんでそんな幸せそーな顔してんの、お前」
『えへへ、分かる?』
あー森山な、とお兄ちゃんは私の頭をわしゃわしゃしながらそう呟く。
『そう!先輩傘忘れててね、先輩スポーツマンだから風邪ひいちゃ駄目だと思って貸したの!』
「一緒に帰るとかなかったのかよ…」
『そんなっ…恥ずかしくて…!!!』
息止まっちゃう…!想像しただけでも心臓が破裂してしまいそうだというのに隣を歩くなんて出来るわけない…!
「俺にはあいつのどこがいいか分からんわー…」
『分かっちゃったらホモになっちゃうでしょ!』
「なんねーよ!!!!」