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『大丈夫?里緒ちゃん』
「うん、大人しくしておけばすぐ治るよ」
里緒ちゃんに肩を貸して机の方まで一緒に歩く。
「それよりごめんね…。その、森山先輩と一緒に来ちゃって…。悪いかな、とは思ったんだけど足痛くて」
『ああ!良いよ気にしないで!痛かったら誰でも楽したいと思うし、それに…』
誰にでも優しい森山先輩が好きなの。
里緒ちゃんはそれを聞いて「陽菜ちゃん健気すぎる…!」なんて感動していた。
『…でもちょっとは妬いた、よ』
「うんうん」
『だけど私彼女じゃないしうあー!みたいな感じになっちゃって』
「うんうん」
里緒ちゃんは凄く良い笑顔で私の話を聞いてくれる。
「そういうもんだよ恋愛って!まあ私の場合ライバル多すぎなんだけどね!」
『そう、だよね…』
よくよく考えれば里緒ちゃんの方が前途多難だ。
黄山くんはモデルだし日本中にファンがいるし下手したらそのライバルは千を超えるだろう。
『頑張って里緒ちゃん!応援してる!』
「ありがとう!あっそろそろ先生来るよ、席つかないと」
『あ、ほんとだ』
里緒ちゃんの一言で私は自分の席に着く。
タッチの差で先生が来た。危ない危ない。
頬杖をつきながら担任の言葉を聞き流す。
健気、かあ…。
そりゃそうかもしれない。なんせ、片思い歴は三年を超すのだから。