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今日はとてもいい日である。
俺はにこにこしながらあるいていた。隣に女の子が居る状態で。
「すみません…、森山先輩」
「ああ、別にどうってことないよ。それに困ってる女の子を放っておくなんて男として最低だろう?」
朝、登校途中にこけたらしく足を捻っていた。足をぎこちなく動かしながら歩く彼女に俺が支え棒役をかって出たわけだ。俺紳士!!
俺の体を支えにして片足だけで階段をのぼる彼女は申し訳なさげに俺を見上げている。
ああ…!まさにこれ!俺が追い求めている女の子!!断じてテンションフルスロットルなあいつを女の子の鑑だなんて認めない。
「教室はどこ?送ってくよ」
あわよくばデートとかいけちゃうんじゃないか?!と内心下心満載の俺に彼女は教室の場所を告げる。
え、と声をあげてしまった俺はきっと悪くない。
この子とあいつがクラスメイト…?!!!
「どうかしましたか?」
「あ、いや何も…」
やべえ絶対絡まれる、それはすごく困る。大変だ。
しかもこの子が「私の森山先輩になに近づいてんのよ!キーッ!!」みたいな感じであいつに虐められるなんてことがあったら俺は…!!
行きたくない、もの凄く。だけれどこの子を放って教室に逃げたくない俺は一体どうすれば。
「すみません、森山先輩…。教室まで来てもらっちゃって…」
「いや、別にいいんだよ」
そう答えながらちらりと教室を伺う、…あ、いない。なんだ心配して損した…!
はあ、と安堵のため息をついて隣の子に向き直る。
『あれっ里緒ちゃんどうしたの?』
「っうわあああああ?!」
お前はどこぞの透明少年だ!!!とんでもない力隠し持ってやがったなお前!
…そんなことはない。たった今登校しただけのようだ。
「あっ陽菜ちゃん!足捻っちゃって、森山先輩に送って貰ったんだ」
やべえ、絶対『優しい!さすが私の森山先輩かっこいい!優しい!すき!』なんて言葉が飛んでくるに決まってる。
『森山先輩!』
「…おはよう」
『ありがとうございます!この子私の友達なんです!助かりました!』
………え、なにこの拍子抜けな感じ。
如月はさっきの子と話してる。あ、フェイントか?!
と、思った矢先また『森山先輩!』と呼ばれる。
『そろそろチャイム鳴りますよ!』
如月がそう言ったと同時にチャイムが鳴り出した。
俺が全力ダッシュしたのは言うまでもない。
………普通、こういうときって妬いたりしないのかな。いやまあ俺彼氏じゃないし妬かれても困るけど!