09
「あっ如月さんだ」
『あ、えーと、…』
「き、きききせくん?!」
『あっそうだ黄木瀬くんだ!』
黄瀬だから!と叫ぶ声が二つ聞こえた。
里緒ちゃんは私の後ろからなんで黄瀬くん?!と叫んでいる。
『なんでって…仲良くなったから…?仲いいのかな、よくわかんないけど』
「えーそこは仲いいって言っときません?」
「なんっ、えっ、もっわかんない…!ていうか笑顔眩しい…っ!」
里緒ちゃんが両手で顔を覆って嘆いている。
黄瀬くんは慣れているのかははっと笑っていた。
「如月さんの友達っスか?」
『うん!里緒ちゃんっていうの、可愛いでしょ』
「そうっスね、二人とも可愛いっスよ」
「黄瀬くんに言われてもそこまでの喜びはないけどありがとう。どうせなら森山先輩を呼んでくれださい」
「え、ちょっひどくねえ?!」
だって嬉しくな…いや嬉しいけど森山先輩が良いんだってば!
というかこの背中のシャツを力強く握っている里緒ちゃんは果たして息をしているのだろうか。
「っ………今なら死ねる…!!!!あ、の、黄瀬くんずっとファンです。その、モデルのときの黄瀬くんもバスケしてる黄瀬くんも、応援してます…」
ありがとう嬉しいっス!なんて笑う黄瀬くんに里緒ちゃんが本格的に死にそうになっていた。
「もうありがとう!陽菜ちゃん黄瀬くんと知り合いになってくれてありがとう!」
黄瀬くんが居なくなってからぎゅうぎゅうと抱き着いて喜びを体現する里緒ちゃん。ものすごく可愛いです。
『どうってことないんだけどそろそろ苦しいかな!!』
「はっごめん思わず…!ああもうほんとかっこよかった…!」
頬を両手で挟んでうっとりした顔をする。
私にはちょっと(黄瀬くんについては)理解できない話なのでよかったねえ、と笑っておいた。