ブラックベリー | ナノ



  07




「森山、一年の如月陽菜って知ってる?」
「ぶっ!」

部活はじめに柔軟体操で組んでいたやつからそんな言葉を投げられ思わず吹き出した。
こいつもしかしてこれを聞くために俺とペアになったんじゃ。

「大丈夫か!?森山」
「ああ…、なんでもない。で、如月がなんだって?」
「可愛いって噂でさー、森山ならなんか知ってんじゃねーかなって思って。知ってる?」

知ってるもなにも俺に猛アタック中ですけどね!
ていうかあいつが可愛い?!いや確かに外見だけなら可愛いけど中身はかなり終わってるぞ!?
しかしこいつにどう説明したものか。
そんな俺に助け舟を出したのは隣で柔軟体操をしていた小堀だった。

「俺知ってるけど好きなやつ居るらしいぞ」
「えっマジか!」
「だからやめとけば?」

なんだよそれー…、なんて不貞腐れるそいつには悪いが小堀まじ神様。

「ていうかそんな噂になってるのか…」
「そうじゃねえ?俺、同じクラスのやつから聞いたし。一年で一番可愛いって有名だぞ」

つか誰か俺に彼女を恵んでくれー!と嘆くこいつに要るなら如月やるよ…、なんて思っていた。


「あ、」
『もっ、りやませんぱい…!』

俺に会うたびにきらきら輝く瞳。どうやら移動教室のようで腕にはノート、教科書、筆記用具が抱えられていた。
………いや確かに可愛いんだけど、可愛いけど。

『こんにちわ!今日も素敵ですね!叶うなら24時間ずっと見てたいです…!』

…中身がなあ。
うっとりと、俺を見つめながらそう言うが反応にも対応にも困る。

「…如月、人気みたいだな」

かくなるうえは話題を変えるしかない。
昨日聞いたばかりの話題を投げると如月は意をつかれたのか丸い目をさらに丸くさせてぱちくりと瞬いた。

『えーと…』
「可愛いって評判らしいぞ。良かったな」
『…わたしは、』

急に俯いて、教科書をきゅっと握る如月。
あれ、なんだこの反応。

『たくさんの人じゃなくて、森山先輩に可愛いって言ってほしいんです』
「………」
『…はっ!…あの、えと、随分烏滸がましいことを…何でもないです忘れてください失礼しました!』

どうやら無意識に言ったようだ。慌てて発言を取り消して俺の前から走り去る如月。

「如月!」
『はい!』

その背中に叫んだのは紛れもなく俺。
困惑した顔で振り返った如月に俺もちょっと気が引けたがもう後には戻れそうにない。

「如月は可愛い、…けど中身をどうにかしてくれ」
『っ…善処します!失礼しました!』

花が咲いたように笑って如月は走って去って行く。

…あーもう、俺なに言っちゃってんだろ。
いやだって、と言い訳のように頭で呟く。
一瞬しょげた様子を見せたのが可愛かったのだ。俺の可愛い子センサーはかなり敏感であの如月でさえ反応してしまったわけだ。

でも一番可愛かったのは最後に見せた笑顔だった。

 




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