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  握られた心臓


これの続き

「夢!バスケ部の助っ人に来なさい!」

リコちゃんが提案した案に私は「…えっ?」と声をあげるしかなかった。

『す、助っ人って、私男子じゃないよ…?』
「そんなこと分かってるわよ!ごめん言い方が悪かったわね、臨時マネージャーになりなさい!」

リコちゃんの提案に私は『…へ?』と口を開けるしかなかった。


『…えと、今日から臨時マネージャーになる千歳夢です』

よろしくお願いします、と頭を下げると「よろしくー」とか「よろしくお願いします!」と様々な声が投げられた。
概ね受け入れられているようだ。ちょっと安心である。

リコちゃんが私にこの提案をしたのは一石二鳥を狙ってだった。
まず伊月くんがつきまとってきても日向くんリコちゃんが居ることで阻止できる。(抑制もできる)
そして伊月くんがさぼらなくなる。(これを聞いたときは伊月くん…と引いてしまった。頼むからさぼらないで司令塔。)
そしてそして、バスケ部にマネージャーが居ると何かと楽になるらしい。

一石二鳥というか、一石三鳥?

「千歳ー!タオルくれー!」
『あ、はい!』

ぼんやりしていると日向くんが私を呼んだ。いけない、集中しなければ。

『…』

凄い。素人の私が一言で言うならばほんとに凄い。
何が悪いとかまったく分からない。それでもリコちゃんが喝を飛ばして欠点を修正にかかる。
ていうか、伊月くんが…普通にかっこよく見える。この前はあんなに変態だったくせに…!

「…夢?どうかしたの?顔赤いけど…」
『う、え…な、なんでもないよ!』

くそう…。
気合入れのためにぺちぺちと頬を叩く。伊月くんが物凄くいい笑顔で手を振ってきたが無視してやった。ざまみろ!


「さっきどうして無視したの?」

なにこれデジャブ!具体的に言うなら昨日の放課後!
今度は後ろが部室のロッカーというのが相違点だ。
それ以外はなにも変わりはしていない。私の足の間に差し込まれた伊月くんの足とか追い詰めるために横にある伊月くんの右腕とか。
うわああああん!私のバカ!リコちゃん助けて!
今タイムスリップ出来るのならさっきの私の行為を殴ってでも止めた。

「また無視?俺も人間だから傷付いちゃうな」

しかも昨日と違ってちょっとカッコイイところを見てしまったのが目に毒だ。
所謂これがギャップ萌えというやつなのか。とかそんな呑気なことを考えている場合ではない。

「…ねえ、顔赤いよ。緊張してたりする?」
『っ!』

指摘されて更に顔が赤くなった。顔に熱が集中してますっていうのが手にとるように分かる。
それに気づいた伊月くんがくすくすと笑う。

「俺のこと嫌い?それなら諦めるけど」

顔が赤くなっていることをわかった上でそれを聞くのはずるい。

『き、らいじゃない、けど』
「じゃあ俺と付き合おう」
『暴論すぎませんか!?』

返事は「イエス」か「はい」かでよろしく、と伊月くんはにっこり笑った。
そして空いていたはずの右側に伊月くんの左腕が置かれて簡易的な檻が完成してしまった。…え?

『あ、の伊月くん…?』
「なに?あ、好きですでも大丈夫だよ」

そうではない、全然そこではない!!

「ちなみに肯定以外の返事だと帰さない」
『わーい!伊月くん好きだよ!』

脊髄反射でその言葉を述べいてた。だって伊月くん目がマジだった。猛禽類のような、絶対伊月くんの前世か守護霊は鷲だ。

「ありがとう、俺も大好きだよ夢」

遂に呼び方が最終形態まで到達してしまった。

伊月くんに抱きしめられながら私は思った。
要するに、目を付けられた時点で私は首を縦に振る以外選択肢はなかったといわけだ。

 




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