「そういや高尾フラれたんだって?うける」
「うけないしフラれてもないっすよ!?」
部活の休憩中に宮地さんが明らかにからかい目的でそう俺に言ったので、俺はひきつる顔も隠さずにそう答えた。
「え?マジ?結構話題になってたけど」
「なんだ高尾フラれたのか。ざまあ」
「木村さんひどくね!?」
お前は男の敵だ爆発しろ、と木村さんに真顔で言われた。
「いや…ていうか別にフラれたとかじゃなくて、友達になりましょうっつったら嬉しいけどごめんなさいと言われまして」
「はあ?んだそれ」
「いやていうか時期じゃねーだろその会話。普通それ四月にするやつだぞ」
いや俺もよくわかんないんっすけどそういうあれで。
頭をかきながらそう言うとと木村さんはお前も変な奴だなあ…としみじみ呟いていた。
なんということだ、解せない。
宮地さんはふーんと興味なさ気に言った後で、ていうかさと言葉を付け加えた。
「嬉しいけどごめんなさいって別に嫌がられてねーじゃん」
「…はっ」
とんだ目から鱗である。いやまじで。ほんとにぽろっと落ちた気がした。
「ほんとだ…」
「なんだよ結局高尾に春がくるのかよ。爆散しろ」
「ちょ爆散とか怖いっす木村さん!」
「と、いうわけで何が嫌なんでしょーか更科さん!」
『あの…?』
困惑に染まった瞳が俺を見上げる。
昼休みに突入して教室から出ていく更科さんを追いかけたら辿り着いたのは屋上だった。
鍵閉まってるよな?と思っていたら彼女は制服のポケットから鍵を取り出してその扉を開けた。え、なんで持ってるのと思ったけれどその背中を追いかける。
そして柵の近くに座っていた膝の上にお弁当箱を広げていた彼女に近寄ってその質問をぶつけた。
「いやほらね、昨日断られちゃったじゃん。だけどうれしいけど、ってことは友達になるのが嫌なわけじゃないんだろ?だからなにが嫌なのかなーって…あ、俺個人が嫌とかならすぐ消えるから!」
『あの…別に、高尾くんが嫌とかではなくて…』
友達になっても意味がないから。
彼女は確かにそう言った。それもすごく悲しそうな、泣きそうな顔をして。
『友達、作っても意味ないから。作らないことにしてるの』
「でも友達欲しいんだろ?だって嬉しいっつってたじゃんか」
『だって意味ないんだもの、忘れちゃうから』