「ただいまー」
『お邪魔しま、』
俺の後に続いて玄関に入ったみょうじが固まった。
ああうん…なんか予想できた。俺は足に纏わりついてきた茶トラのイチの頭を撫でた。
『っ、天国…!!!』
「頭大丈夫か、お前」
『むしろ宮地くんが大丈夫?!こんな楽園に居て平然としてるなんて、それは最早裸の超絶可愛い女の子がベッドにいるのに何もしないただの不能だよ!』
「おいこらなんつーことをお前」
なんということを言っているんだこいつは。人様の家の玄関で。
みょうじは俺の足元に屈んでイチの頭を撫でる。イチはにゃあんと鳴いてみょうじに大人しく撫でられている。イチは人懐っこい奴である。
『はああ可愛い…というかイケメン猫くんですね…、この子さっきの写真の子?』
「おう、そいつ名前イチでオスな。…まだ居るけど」
『ほんとに!?…宮地家は私を殺しにかかってるよ…!』
「人んちを殺し屋にすんな」
イチ行くぞ、と靴を脱いであがる。
みょうじは猫がまだ居ることが嬉しいらしく『お邪魔します!』と意気揚々とあがった。
それに返事するようにイチがにゃあんと鳴いたので『イチくんは頭良いんだねえ、宮地くんそっくりだ』とみょうじが顔を綻ばせた。
「あらあ?清志その子どうしたの?」
「あー…家の前で拾った」
『きゃあああ!猫ちゃん天国!!』
みょうじは俺の背中に縋っていた。まるでそうでもしないと崩れ落ちるとでも言うように。
母さんは特に不快に思うこともなく「あら猫好きなの?」と声をかける。
『はいもう!うわああソマリだ!マンチカンだ!ああっラグドールもいるうう…!』
「ソマリはふー、マンチカンはサン、ラグドールはしー、だ」
『ふーちゃんサンちゃんしーちゃんですね!了解しました!』
そう言ってみょうじは猫タワーでくつろいでいたしーの方へ寄っていく。
ただ寄るときはゆっくりしてしっぽまで確認していたのでやはり猫が好きな方なのだろう。
しーはしっぽをゆっくり振っていたのでみょうじは『しーちゃん、こんばんわ』と言ってしーを撫でていた。
「清志のお友達?」
「いや今日初めて喋ったっつーか、クラスじゃもっと大人しい奴なんだけどここまでテンションの上がってるみょうじは初めて見た」
「猫相当好きみたいね、あの子」
「筋金入りだと思うわ」