私死んでも良いわ 『あ、あさばくん…?』 ん?と整った顔が私の方へ向く。対して私はあまりそういう人たちに耐性がないので目をそらす。あああ気分悪くしたらごめんなさい。 『あの、日誌だけだし…私やるから浅羽くん帰って大丈夫だよ…?』 「良いよ、だって日直は二人でしょ」 その気持ちは大変嬉しい、んだけど浅羽くんだと私の心臓爆発しそうなんです! あああ日誌の字がミミズすぎて大変なことに…!そう思って消しゴムをかけようとしてそしたら今度は焦りすぎて消しゴムを指で払ってしまった。跳ねながら消しゴムが床に落ちる。浅羽くんがふっと笑った気配がした。わ、笑われた…! 「焦りすぎじゃない?」 『だ、だだって』 「…本、よく読んでるよね」 とんとん、と私の机の角に置いていた本を指先で軽く叩く。 『あ、えっと…図書委員だし…』 「知ってる」 知ってる…、知ってる!?なんで!? 「あー…今日は、月が綺麗ですね」 『へ、』 浅羽くんは肘をついて窓のほうを向く。私も外へ目を向けるけれどそこから月は見えない。というかそもそも今はまだ夕暮れで月が出る時間じゃない。 『浅羽くん…?それ、どういう意味?』 「…知らなかったかー」 でも別に残念そうじゃなくふわりと笑って日誌を閉じた。いつの間にやら日誌は浅羽くんが書き終わっていたらしい。そしてそれと鞄を持って浅羽くんは教室を出ていく。 『えっねえ浅羽くん!』 「明日、教えてあげる」 にこ、と笑顔を残して浅羽くんは教室を出ていった。い、一体なんなの浅羽くん…! そうしてまた次の日も浅羽くんと私は残っていた。 浅羽くんが黒板を消して、私は花瓶を洗って。私の方が早く終わったので日誌を開く。ページをめくりながら今日の一限目…なんだっけ、考えていると、とある衝撃的な文字が目に入った。 日付は確かに昨日のものでその綺麗な字は私じゃなくてということは浅羽くんが昨日書いていた文字はこれなんだろう。 「それ、答え」 『………まじですか』 「うん」 で、返事は?尋ねる浅羽くんに私は『おねがいします…』と小さく答えた。 私死んでも良いわ 浅羽悠太/君僕 ------ 月が綺麗ですね=私死んでも良いわ=あなたが好きです |