短編 | ナノ

温暖化を止めるには



『たっかおー!』
「よー夢」

見慣れた後ろ姿と秀徳バスケ部のオレンジのスポーツバッグ。
見つけた私はポニーテールを揺らして走ってその背中に声をかけた。

『今日はチャリアカーじゃないんだ?』
「あんなんいっつも漕ぐわけねーだろ!一人のときは大体チャリだっつの」
『大概一人じゃないけどねー』

私がからかうような口調でそう言うと高尾はうるせーと私の鞄を引ったくって自転車の前カゴに投げ入れた。

『乗ってく?』
「乗せる気満々じゃんか。仕方ないから乗ってあげる」
『乗りたいくせにさー素直じゃねーの!』

私は荷台に腰をおろして高尾の腰に手を回した。


『お疲れ』
「お、さんきゅ」

適当に寄ったコンビニでこの暑いなか頑張ってくれた高尾にアイスを贈呈する。
高尾はよっぽど暑かったのか知らないがさっそく包みを開いてアイスをかじった。
そうしてシャツの首もとを「あちー」っと言ってパタパタする。

う、わ。
邪な思考が出てきたので浮わついた頭を冷やすために自分用に買ったアイスをかじる。

「…なーんで顔赤いの?夢」

くそ目敏いなこいつ…!なんだそれ鷹の眼使ったのか!試合に使ってくださいお願いですから。

『あ、暑いからっです!』
「ふはっなんで敬語なんだよ、バレバレだしつか見えてっから」

俺のここ見てテンションあがっちゃった?
ニヤリと人の悪そうな笑顔で自分の胸元を指差す高尾。

『ばっ、ばばばかじゃないの!』
「えー当たりだと思ったんだけど」
『ちがう!』

いやほんとは当たりなんだけど!でもテンションあがっちゃったとかそれただの変態だし女としてそれどうなの!きもいとか思われたら私泣く!
一人で悶々てしていると高尾が「なーんだ、俺だけかあ」なんて残念そうに呟いた。

『え』
「夢のシャツ、透けてて柄見えてんだもん。それに珍しく髪あげててさ、髪が張り付いたうなじとか俺的には堪んないんだけど?」
『え、あの』
「俺きもい?」
『え、あの…きもくない、です』

というか私ブラ透けてたのか、あほか。ていうかなにいってんの私。きもくないとか変態丸出しじゃないか。

間抜けな顔をした私のアイスはどろどろとアスファルトに落ちて染みを作った。

「あーもう勿体ねえ」

そう言って高尾はもはや液体と化したアイスを私の指ごと舐めた。

私も変態かもしれないが、高尾のがもっと変態だと思う。
いやそれよりなにより、この暑さをどうにかしないといけない。おかげさまで私の頭が熱暴走でフリーズでああもうボキャブラリー、…違った。言葉までおかしくなってしまった。


固まってしまった私に高尾は構うことなく甘い味のキスを落とした。




とりあえず呼吸、とめてみる?
高尾和成/krk






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