短編 | ナノ

こんな私でよかったら



『よし、皿洗いしゅーりょー!』

手をかけていたタオルで拭いているとリビングでテレビを見ていた和成が私のことを呼んだ。
ソファに座っていた和成の近くまでいくとそのまま手を引かれて彼の膝の間に座らせられる。

『どうしたの?』
「んー?ま、色々と」

にこにこ笑顔の和成に少しの違和感を感じるけれどもふーん、と返して点けられていたテレビに目を向けた。

「夢。しりとりしようぜ」
『ほんといきなり、どうしたの…』
「まーいいからいいから。んじゃ俺からね。りす」

この男、マイペース過ぎる。
しりとりなんていつ以来だろか。
だけれど頭の中ではす、す…と考えているのだから完全に私も和成に乗せられている。

『…すき焼き。今度食べたいな』
「えー俺キムチ鍋食べたいな。というわけでキムチ鍋」

辛党の和成が指定するキムチ鍋は本当に辛いのだ。私は正直苦手です。

『べ、べ…弁当箱。あ、弁当箱出した?』
「あっ、やべ…。自分で洗いマス…。コント」
『もー、馬鹿。トマト』

なぜか会話を続けながらしりとりも淡々と続いていく。
果たしてこれって意味があるのだろうか…。

「あ、もう10時じゃん。時計」
『じゃあ…池』

私がそう言うと和成の体がびくりと動いた。

『えっなに?!』
「キタコレ!!!!」

いつかに会った誠凛の選手よろしくそう叫んだ和成。え、なにもしかしてギャグとかあった?!
混乱する私を放って和成はこほん、と一つ咳払い。そして、背中から私をぎゅっと抱きしめる。

「夢、…結婚しよ」
『え…』
「冗談なんかじゃねえよ。なんっつーの?サプライズ?」

ほら、と和成は私の前で紺色の小さな小さな箱を開いた。

「…びびった?」
『………ばか』
「うん。俺夢馬鹿だもん。で、…返事が欲しいところなんですけど」

和成が後ろにいるのがとっても残念だ。
きっと不安でしょうがないみたいな顔をしているに違いない。見たかった。

『よ、でしょ?…よろしく、お願いします』
「………好きだわー、マジそーいうとこ!」

こんな私でよかったら



◎高尾和成/krk
07.01 修正・加筆






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -