完敗てすよ、お嬢さん 奴はチャラい。 奴というのが同じクラスで私の彼氏でもある高尾和成のことなのだが。 何故か告白され、渋っていた私を口八丁手八丁で丸めこんだ。(別に嫌いじゃないし今は、ちゃんとすき、だけど) 「で、ここはwhatをいれて…」 緑の板に白い文字が刻まれていく。 私の英語の担当教師は当てるということをせず、淡々と授業を進めていくものだから絶好のお昼寝時間だ。六限目となれば尚更。 『(…眠くなってきた)』 そして私も例に漏れず眠くなってきた。 だけれど今日はテスト前。寝るわけにはいかないのだ。 こくりと頭が舟を漕ぎそうになったが頭をぶんぶんと振って周りを見渡す。 私は眠そうな人や眠ってる人を見ると私は眠気がとれるタイプなのだ。 超頭動いてる、なんて眠りそうな人を笑っていたら反対側の列の高尾と目がばちりとあった。 前の席の緑間は真面目にノートをとっているというのになんであいつこっち見てんの。 『(前向きなよ)』 口パクでそう伝えるものの彼はにっこー!と笑顔を崩さず私をじっと色素の薄い瞳でこちらを見てくる。 そして何故か彼は私を見ながら右手を自分の口元に寄せた。 何するんだろう、疑問がその一秒後に吹っ飛んだ。 彼はあろうことか口元に寄せた手を勢い良く振った。…言葉での説明が難しい、所謂投げキッスというやつだ。 『っ…?!』 あ、っほじゃないのあいつ!! 奴は授業中、目があえば好きだの愛してるだのなんだか口パクて言ってきてやがる。 ほんとチャラいことこの上ない。そしてやられっぱなしは面白くない。 「ぶは!やべえおもしろ…!!」 真っ赤になって顔を逸らした夢ちゃん。 いやーほんと俺の彼女は可愛くて面白い。 「…趣味の悪いことをするな。気色悪いのだよ」 「いやん真ちゃん怖い!」 「…」 真ちゃんは諦めたようで深いため息をつきながら前を向いた。 そして俺のホークアイはこちらを向いた夢ちゃんをとらえる。 「っ??!」 えっ、ちょ待っていま夢ちゃん何したの! 俺の視力が落ちてないなら夢ちゃん投げキッスしてくれた…?! 普段そんなことしてくれない夢ちゃんからの投げキッスとなればまあ破壊力は抜群なわけで。 「っ〜…」 『(ざまみろ!)』 その一秒後には、顔を真っ赤にしている俺と勝ち誇った顔をしている夢ちゃんがいた。 完敗ですよ、お嬢さん 2013.05.11 修正・加筆 |