伊月俊 ◎これとこれの続き 『…』 「…」 も、ものすごく視線が刺さる。きっと伊月くんの視線に何か物理的な力が働いているのなら私は絶対に痛いと叫んでいる自信がある。 伊月くんは私の隣の隣の席。そして私と伊月くんの間の人は一限にも関わらず机に頭を突っ伏して爆睡だ。 つまり伊月くんの視線が直で注がれていることになる。 あのとき。教室で…せ、迫られたとき以来伊月くんは隠すということをやめてしまった。 彼にはきっと羞恥心が抜け落ちてるんだと思う。伊月くんは今すぐタイムスリップして探してくるべきだ。 そして二度目は部室で迫られ、告白された。そして半ば強引に首を縦に振らされた。 そのことをリコちゃんに報告すると崩れ落ちるように地面に座り込んだ。ごめんリコちゃん。 結局、授業が終わるまで視線がそらされたことは数度しかなく、残りの時間は私に注がれていた。 『助けてリコちゃんんん…!!』 「よしよし、夢」 合同体育で一緒になったリコちゃんに泣きつく。リコちゃんは「許すまじ…伊月くん…!」と歯をぎりっとしていた。 「リコー!次試合だよー!」 「今行くー!」 リコちゃんは試合のようでクラスの子に呼ばれてコートの方へ入っていった。 ちなみに今日の体育はテニスだ。 リコちゃん行っちゃったし私もクラスの子のとこ行こうかな…。 「…シャンプー、カモミールの匂いだね」 『!?ひゃああああ!』 「そんな驚かなくても」 ぼーっとしていた私の横から顔を出したのはあの伊月くんだった。 にこり、と笑う伊月くん。え、ていうか今なんと仰ったの。 「シャンプー、カモミールの匂いだよね」 そう言って伊月くんは私の髪に顔を寄せて嗅いでいた。 『へ、え、あ、う』 「はは、可愛い」 なに言ってんのこの人。やだもう泣きたい。 なんでいきなり髪の匂い嗅いでるの、あほなの。 「俺と一緒だ」 『そう、なんだ』 「うん。姉の使ってるから」 そう言ってほら、と私に頭を寄せた。確かにそこから香ってくるのは甘酸っぱいリンゴのような匂い。 『ほんとだ、一緒…かな』 「お揃いだね、嬉しいな」 にっこりと。確かにこの笑顔だけなら女の子が落ちることだろう、音声さえ切っていれば! しかし彼氏となった今。その笑顔にちょっとばかりどきりとしてしまう自分も居るわけで。 ああああ…!完全に侵食されてるうう…! 結局リコちゃんが伊月くんを発見して引きずっていくまで私は開放されなかった。 「また後でね、」 そう言って、彼は言葉だけでなくおでこにチューまで残して行きました。 ----- ダジャレを言わないのでただの変態で残念 ←→ |