短編 | ナノ

宮地



「…マジで宮地さんと夢さんって付き合ってないんすか?」

高尾の何度目かも分からないその質問にいい加減嫌気がさして夢と顔を見合わせてはあとため息をつく。

「おい、いい加減うざいんだけど高尾。その口ガムテープ貼って欲しいのか?ん?」
『まあ落ち着きなよ、清志』
「とかいいつつ糸と針を向けている星野先輩も落ち着いた方が良いのだよ]

やだうっかり、そう言いつつも針の先を逸らそうとしないのだから確実に確信犯だ。

「幼なじみだっつってんだろ、しつけーよ。焼くぞ」
『そうだよ、そんなこと言ってると今度行ったとき高尾くんのボトルに激物仕込むからね』
「すいませんっした!」

土下座せん勢いで机スレスレまで頭を下げた高尾を見て俺はよし、と呟いた。
夢は縫っていた糸を糸切りハサミで切る。

『よし、終わり。いーよ、緑間くん』
「すいません、ありがとうございました」

夢が緑間にシャツを渡す。
高尾と緑間が三年の教室に居るのは緑間のシャツのボタンがとれたので家政科部である夢につけてもらうためだった。

『ほんとはトップコート塗るのが取れなくて良いんだけど、もしまたとれたら持っておいで』
「え!?マジっすか!俺絶対持っていきますね!」
『高尾くんは料金とるよ』
「なんで!?」
「つーかお前ら部活行けよ。大坪に言ってんのか?」

俺がそう言うと高尾も緑間も「あ」と声をあげて慌てて借りていた席を立つ。
あ、こいつら絶対外周走らされるわ、ざまあ。
練習で見たことのないダッシュを見せた二人の背中を見送った。

『清志は言ってるの?』
「あ?当たり前だろ、委員会っつってる」
『もう終わってサボってんの誰ですか』

知らね、と俺が答えると夢はバレても知らないからね、と言った。

「お前こそ部活は?」
『えー、今日は気分じゃないから良いや』

こういうとき一人ってすごく楽だよねー、なんて呟きならが背伸びをする夢。
夢は家政科部に所属しているものの部員は一人しか居ない状態なので自分の気分で部活を行っている。

「ふーん、じゃあ早速高尾のボトルに劇物仕込みに行くか?」
『せめてかわいそうだから丸ごとはちみつレモン作ってあげることにした』
「劇物よりはマシだな」

そんじゃ行くか、俺がそう声をかける前に夢は机の横にかけていた鞄を手に取って「そろそろ教室出ようか」なんてタイミングばっちりだったので笑う。

思わず吹き出した俺に夢は目を丸くする。
幼馴染歴18年も伊達じゃねーな、なんて思いながら俺はなんでもねえよと笑った。






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -