宮地先輩 「宮地さーん!」 俺がかけよると携帯をいじっていた手を止めてこちらをちらりと見た。 「なんだよ?」 心底鬱陶しそうな顔を俺に向けてくるがそんなことでめげる和成くんではないのだよ。 「今から一緒にマジパ行きません?」 「行かねーよ。大体なんでお前と行かなきゃいけねーんだよ」 つかどっか行け、まだ携帯をいじりながら俺に手を振る。 「えー行きましょーよー!たまには親睦深めましょーよ!」 「お前と深めるもんなんてねーよ!つーか早くどっか行…!」 宮地さんのお決まり台詞「轢くぞ!」が出るかなーなんて思っていたら宮地さんがいきなり言葉を詰まらせて前につんのめった。 え、なにごと?俺が目を白黒させていると宮地さんの脇から可愛らしい女の子の顔が横から覗いた。 『清志先輩!お待たせしました!』 「…いきなりぶつかんのやめろ、夢」 はあ、とため息をついたのは顔がこっちに向いていたので俺に向かってだろう。 「えっ宮地さんの彼女さんっすか!?」 「………居ちゃ悪いかよ」 あ、これは完全に不貞腐れているなあ宮地さん。やっべえおもれえ。 『清志先輩のお知り合いですか?』 「…部活の後輩だよ」 『あっもしかして、高尾さんですか?』 くるっとした黒目で俺を伺う宮地さんの彼女。 『清志先輩から後輩のお名前は高尾さんと緑間さんしか聞いてないんですけど…』 もしかして緑間さんでしたか、なんて不安げに聞いてくるので慌てて否定する。 「や、俺が高尾っす!つーか多分同い年…っすよね?」 宮地さんに問いかけると「…そーだよ」とそっぽを向いている。 あーこれは構って貰えなくて拗ねてるわ。やべえ写真撮りたい。 「じゃあ高尾さんじゃなくて高尾くんで全然オッケー!」 『あ、ほんと?よかったー』 私敬語苦手なんだー、なんて言うから俺もーと答える。 「じゃあ、えっと夢ちゃん?で良い?」 『うん!じゃあ私も高尾くんで!』 俺が夢ちゃんのことを下の名前で呼ぶと宮地さんの体がぴくりと揺れた。 そして雰囲気が人でも殺せそうな感じになる。この場合殺されるのは多分俺だけども。 なんだ、宮地さん溺愛じゃん。 「おい、夢。そろそろ行くぞ」 『はーい、』 くるりと振り返った宮地さんが先に歩き出す。あーあれは完全に拗ねてるわ。 噴きそうになるのを口元を手で押さえて必死に抑えていると宮地さんを追いかけていった夢ちゃんがくるりと振り返って顔の前に手を出す。 あれをなんというかと言われると、詫びるポーズになるのだろう。 ついでに言うなら「ごめんね」と口パクで告げられた。 「しっかりバレてるし!」 夢ちゃんのお陰で口元を覆った意味がなくなりぶはっと盛大に笑い声が漏れた。 うん面白いモン見れたし今日はちゃんとまっすぐ家に帰りますかね!なんて頭のなかで考えながら俺は宮地さんたちとは別の方向へ歩いた。 ←→ |