珍しく、というか久しぶりに七瀬が不機嫌そうにしている。どうしたのかしら、そう思いながら頬を突いてみたらむっとしながら私へと視線を向けるから微笑んだ。何かあったのなら、話くらい聞くわよ?その言葉に、眉尻を下げた七瀬は玲央〜なんて情けない声を出すから驚いてしまう。
彼とは高校で出会って、仲良くなった。あまり征ちゃん以外の事で感情を乱すところを知らないから今回もまたきっとそうなのだろうとは思っている。いや、確信している。
(征ちゃんがついに動き出しのかしら?)


「玲央〜」
「なあに?」
「オレって征のこと好きなの?」
「え、違うの」


私の反応にやっぱそうなのかなあ、と机に突っ伏すから頭を撫でる。オレが好きになっていい相手じゃないんだっての、そんな呟きに首を傾げた。どうしてと問い掛けてもいいのか、それとも触れない方がいいのか悩んでしまう。征ちゃんの為ならなんだってやるのに、それ以外の所では案外繊細なのよね、この子。
それから話すまで待ってみる事に決めたものの、部活中の二人を見ていたらとても黙っていられなくて。何度も駆け寄りそうになるのを、小太郎たちに押さえつけられていた。ああもう、じれったいのよ!叫んでしまいたくなるのを堪えるのが限界で七瀬を自室に呼び出した


「もう限界よ、全部洗いざらい話しなさい!」
「あ、はい、すんません」
「何があったの?征ちゃんも日に日に不機嫌になっていくばかりだしもう私も限界よ!」
「玲央、落ち着いて。ちゃんと話すよ」


苦笑い気味になる七瀬に取り敢えず深呼吸をして、紅茶を出す。玲央がいれてくれるとホント美味しい、そんな笑顔に癒されていたけれどすぐに頭を左右に振って切り替えた。さあ、白状しなさい。そう言って詰め寄れば、七瀬はカップへと視線を落とし少しだけ沈黙。
征が、オレを好きなんだって。その内容よりも言い方があまりにも他人事過ぎて征ちゃんが不機嫌になる理由が少しだけ理解出来てしまった。この子は、選手として人として征ちゃんの力になろうとする。だから、自分の気持ちを理解しようとしていないのかもしれない


「ねえ七瀬、ちょっと試してみる?」


鈍感には荒療治も必要よ、きっとね


気付けば全部、簡単な事なの




「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -