玲央が七瀬に気持ちを自覚させて、尚且つ気持ちまで伝えてもらえるいい案があるというから乗ってみた。本当に最初は遊び感覚だったけれど、日に日に様子がおかしくなっていく姿を見ていられず、何度も我慢よ!なんて玲央に叱られては背を向けていた。
だけど七瀬が倒れた、もういいだろう。そう思って、目覚めた彼に自分の重要性を問えば拗ねたような態度をするから困ってしまった。彼は年上だ、一つだけではあっても。そして同学年の中でも大人びた方なのだと、思ってもいる


「そんな七瀬がまさか拗ねるとはね」
「なんだよ、それだけ俺にとって征は大切なんだけど」
「!」
「あ、照れた」


小さく肩を揺らして笑う七瀬の隣が、心地よくて安心する。玲央に助かったよ、とあの日、保健室から二人で出た時に言えばちょっと淋しいわなんて言っていたけれど。
(玲央も七瀬を気に入っているからね、だけど駄目だ)
紅白戦を見ながらデータを書き加える七瀬を見上げる、そうしたらこっちを見てもいないのにどうしたー?って。狡い先輩だ、なんて思いながら深い溜息を吐き出した。幸せ逃げるぞ、と頭を優しく撫でられつい気が緩みそうになる。だけどすぐにバインダーをとんとん、と肩へあてながら一年はちょっと集合〜と歩き出す背を引き止めた


「七瀬、何処に行くんだ」
「え、今から一年のトレーニング」
「誰のために、何をするって?」
「‥あーはいはい、わかってますよ」


征の傍で、征の為に頑張ります。その言葉ににこり、微笑み自分より大きな彼の頭を撫でる。賢い子は好きだよ、と言ったら瞬きを繰り返して七瀬はけろりとしながら言葉を落とす。近くを通った玲央がキャー!とか叫ぶ声とか、小太郎の駆け寄ってくる足音なんて気にもならず。ただ真っ直ぐに自分へと向けられた瞳に、頬が緩んだ。
七瀬のそういうところが気に入ったんだ、僕はね。それにいいからさっさと練習しろなんて、恋人にちょっと冷たいんじゃないかとか抗議をする間もなく彼はやっぱりトレーニングが気になると去っていく


「僕とバスケ、一体どっちが大切なんだろうね」

「オレには征の為に選手を育成する義務があるんだよ」


君だから好きなのだと、言い切れるよ

惚れた弱みだって楽しそうに笑う君が愛おしい


2013.04.02 完結


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