あれ、熱は無い。その声にだから何でもないって言っただろ、と深い溜め息。顔の熱はもう引いた、いつも通りのオレだ。まあ元気なら安心した、そう言って頭を撫でる手を掴む。どうした、痛かったか?その優しすぎる幸の声を聞きながら、自分の頬に彼の手をあてた。
黒子から聞いた話の真偽を確かめたくて、じっと見つめてみればぱちぱちと瞬きを繰り返すからそっと表情を緩める


「黒子に聞いた」
「ん?」
「最近、オレがあまり構わなくて拗ねていたらしいな」
「げっ、それは内緒って言ったのに‥!」


ああ、本当だった。それに安心して目を閉じる。心配しなくても、オレがお前から目を逸らす事は絶対に無い。その言葉に了解した、と聞こえた声は明るくて情けない程にぎゅっと胸が締め付けられた。
幸と青峰が互いを特別に想っているのはわかっている。だけど、それでもオレにだって譲れない想いがあるんだ


「オレなら、幸を守ってやれる」
「へ?」
「もう少し耐えてくれ」
「えっと、うん、わかった」


冬までには幸を一軍から降格させられるはずだ。これ以上の負荷を身体に与え続けたら、間違いなく幸は壊れる。中学一年という未熟過ぎる身体で監督からの期待に応え続ける幸が、自分のバスケを見失う前に何とかしてやりたい。
オレを避けるようにする監督は間違いなく、アイツを一軍から降格させたいオレの考えには気付いているだろう


「戻るぞ、幸」
「はいはい、‥なあ、赤司」
「ん?」
「俺な、お前の事だってちゃんと見てるから」


無理してるの、俺のせいだってわかってるんだ。そう弱々しく呟かれた言葉に笑みを浮かべる。自分の事で揺れ動く姿は、酷く気分が良いものだ。けれど、大輝にも無理をさせてる。その言葉には溜め息しか出ない。
基準はいつも青峰で、それを中心に幸は動いていた。出会ったのは俺の方が早かったのに、どうして。行くぞ、それだけ言って眉間に寄った皺を隠す事はせずに歩き出す。
(何で、こっちを見ない…!)


「赤ちん、大丈夫〜?」
「気分は最悪だな」
「また幸ちんに振られたのー?」
「五月蝿い」


早く練習に戻れ、と大きな身体を押して息を吐き出す。テツヤ、ナイスパス!その声が響くコートから目を逸らし、じっとこっちを見てくる存在を睨んだ。
青峰、いつかお前の目の前からあの存在は消える。その時に絶望し、幸を嫌いになってしまえばいい。そうすれば必ず、アイツはオレのモノになるんだ。歪んでいる、そう言われようとも構わないからオレしか知らない幸を作りたかった


曲がり続けて、何処へ行こう

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