幸君が、また姿を消した。だけどその理由は青峰君が話してくれて、ほっとする。君を導いてくれた人の薦めで足を治しに行くんですね、青峰君から聞きました。日本で君の帰りを待っています、そのメールを送れずに過ごした約一年と、少し。
僕達が高校三年生になり、春を少し過ぎた頃。幸君は再び日本へ帰ってきた。
(バスケがまた出来るぞー!なんて写真付きのメールが来たので、きちんと保護をしました)


「俺も火神とマッチアップしたい!」
「試合はオレと火神がマッチアップなんだよ!」
「なら俺も!PFやる!」
「幸はPGだろーが!」


火神君を挟んでの攻防に思わず苦笑い。後で1on1をしてもらいましょう、その提案で涙ながらに頷いた幸君の頭を撫でる。久しぶりに会いましたが、何故、幸君は身長が伸びているのか。羨ましいです。
ほら、遊んでないで始めるわよ!カントクの声が響き、整列をした。だけど試合開始のホイッスルが鳴り響く瞬間だった、その声がしたのは


「帰って来たなら連絡ぐらいくれてもいいだろう、幸」
「紺野っち、ハクジョーっスよ!」
「お前はいつもそうなのだよ、紺野」
「幸ちん、お菓子ないー?」


全員の大集合に、嬉しそうに笑ったのはカントクだった。折角だし混合チームにしちゃいましょう!着替えはね、と張り切り出す姿を流れるままに見ていれば、チーム決めで揉めるのは当然、青峰君と赤司君だ。
どうでもいいから早く試合したい、そう言いながら紫原君へお菓子を食べさせる幸君、これ、君のせいで起こってるんですが


「幸はオレにパスするって決まってんだよ!」
「僕のパスでシュートを決めたいはずだ、幸は」
「ありえねー!絶対に!」
「‥幸、僕と組んで大輝や火神君を負かさないか?」
「何それ楽しそう、やる!」


決まりましたか、これで。全員から漏れた溜息に、赤司はやっぱ俺がやりたい事がわかってるなー!と幸君が抱き着くから青峰君の空気が凍った。何ですかこれ、まるで中学時代みたいですね。
試合開始!改めて響いたホイッスルに、全員の目つきが変わる。さあ幸、行こうか。弾むボールに、僕の隣を走る幸君の声が重なった


「誰にも負けないから、な?」


その言葉に、もうあの日の陰はない


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