バスケを始めた理由は小さな頃にテレビで見たNBAの試合に憧れたから。そんな俺は小学二年生の頃、家の近くにあったクラブチームを知り合いに紹介してもらい其処へ遊びに行くようになった。監督も驚く程に成長が早かったらしく、誘われるままに入った其処で最高学年になる前からチームのエース。だからってそれを自慢したりはしなかったし、当然だとも思わなかった。
皆が居るから俺はバスケが出来る。負けたくないと誰よりも練習をすれば、周りがそれ以上に練習をしていた


「だから俺は特別なんかじゃありません」
「赤司に何を言われた、その実力は間違いなく一軍レギュラーなんだぞ」
「アイツは俺のやりたいバスケをさせてくれるだけです、一軍には行きません」
「紺野!」


昇格テストがあったのは昨日。俺は赤司から受けなくて良いと言われたから放課後は久し振りにクラブチームの方へ顔を出していた。そうすれば監督からの言葉、もううんざりだと言わんばかりに溜め息を吐き出してしまいたくなる。俺はバスケをしたい、ただ楽しく。この速さが武器だと自覚したのは小学五年生。力の制御を覚えたのは小学六年生だ。
出来上がっていない身体への負荷を考えたあの人の指示は正しかったと思うし、異論はなかった。けど此所の監督は違う


「赤司ー、怒られた」
「だから学校も病欠しておけと言っただろ」
「えー」
「まあいい、また話はつけに行く」


駄目だったら一軍の練習くらいは参加するから、と将棋をする赤司の隣に寝転んだ。細長い指がさらり、と髪を撫でるからくすぐったくて身をよじりながら笑う。暫く其処で眠っていれば話し声が聞こえてゆっくりと瞼を持ち上げた。ぼんやりと視界が捉えたのは、真っ黒な肌をした男子。
(あー、大輝か…)
んんー!と伸びをして起き上がり、何してんの?そう呑気に問えば二人の視線が一斉にこっちを向くから思わず身構えた


「幸、一軍に来るって本当かよ」
「は、?」
「オレはそんな許可をした覚えはない」
「赤司は関係ねーだろ、幸、どうなんだよ」
「いや、知らない」


監督に小言を言われてから数時間しか経っていない。赤司も俺が寝ていたから此処を離れるわけが無いし。どういう事だ、と悩んでいれば勝手なことをしてくれたらしいな、そう笑う赤司にオレは口元をひきつらせた。知り合った頃から理由はわからないけれど、どうやら俺がお気に入りらしい赤司は俺に関する他人の勝手を許しはしない。
取り敢えず事態を把握しに行くかなんて言いつつ、大輝に手を借りて起き上がり体育館に向かった


「幸ちゃん…!」
「おす、さつき」
「いきなり一軍なんてどうしたの?いいの?」
「あー悪い、今はそれがどういう事か把握しに来た」
「紺野、待ってたぞ。早く着替えてこい」


一先ず練習には参加をするので監督の言葉に従って部室に着替えに向かい、大輝とさつきから聞かされた説明に脱力。どうやら俺と話をした後に急遽別紙で昇格を知らせる紙が貼り出されたらしい。なんて事を、と思いながら心配そうに俺を見上げるさつきの頭を撫で大丈夫だって、そう笑った。
力の制御は出来る、監督に本気を見せた事は無い。だから問題は無いと決めつけたのが間違いだった


崩壊が、追い詰める

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