押し黙った幸を、ただ抱き締めた。中学時代を思い返せばわかる話だ、コイツは俺達の弱点に唯一捕まったんだ。出来上がっていない身体への負荷は、幸からバスケを簡単に奪ったのか。
ああ、やっぱり俺があの時にもっと‥そんな考えは、簡単に見抜かれ馬鹿野郎。呟いた声が震えていた


「大輝が、バスケを奪われなくて良かった」
「っ、!」
「お前がコートでどんな想いを抱えていても、変わらず、誰よりも眩しいことが嬉しい」


大輝が輝いてるなら、俺はバスケから離れない。お前はいつだって俺の支えだ。その言葉に、ぐらり、視界が揺れる。目を覆うように隠し、ゆっくり息を吐き出した。
幸がいなくなって、バスケがつまらなくなって、テツと新しい光も俺には勝てない。そんな中でコイツは帰ってきた、俺の目の前に。縋りつけばまた幸の負担になる。支えて欲しいなんて思うな、と自分に言い聞かせていたのに


「大輝を、一人にはしないからな」
「っ、ああ」
「落ちるなら一緒に落ちてやる、だけど、絶対に俺が其処から引っ張り上げてやる」


俺より小さくて細い指が、俺の頬に優しく触れる。コイツ、こんなに小さかったか。不意に浮かんだ疑問に、きょとんとした顔が俺を見上げた。俺に勝てるのは、俺だけなんだよ。その台詞で知ってるよなんて笑顔を浮かべるのはコイツだけだ。
頬に触れていた手を上から握り、軽く屈んだ。好きだ、呟きをそのままに落としたキスは、夏日のせいかただ暑かった


遠退いた背に、やっと手が届いた


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