向けられた笑顔にリコ姉いますか、そう問い掛けたら瞬時に間合いを詰められ肩をびくつかせる。決してやましい意味で用があるんじゃないんです!と伝えた何十回目かに目当ての人物が現れてくれて、オレの姿に驚いたような声を出した後すぐ景虎さんから引き離してくれた。
(た、助かった‥)
で、何処に居たの、この問い掛けは何度目だろう。それだけ自分が急に居なくなったって事か。テツヤや大輝にした説明と同じ内容をもう一度繰り返し、本題に入った


「その目で見てくれればわかるだろうけどさ、」
「‥その足、もう駄目なのね」
「もうあの頃みたいにバスケは出来ない、それでリコ姉にお願いがあるんだ」
「何?まさか治せなんてそんな無茶は言わないでよ?」


治せるなら向こうでやってるよ、そう苦笑い。悲しそうに眉尻を下げるリコ姉に、誠凛の力になりたい事を伝えればきょとん、とした表情。向こうに居る間に考えた、色々と。無理をすれば選手としてやっていけるんじゃないか、高校の間だけでもなんとかアイツ等を、大輝を止める為に。それは無理だと諭され、泣いた。ごめん、大輝。零れた涙は暫く止まってくはくれなくて。
そうして、俺は出会った。あの人に。人へバスケを教える事の楽しさを、バスケへの残された道を教えてくれたんだ。だったら俺は迷う事無く、テツヤの力になりたいと思った


「放課後とか休日練習の日、誠凛に行って」
「待って、桐皇にいる幸がどうしてそこまで」
「大輝や皆を、いや、それ以上にテツヤに責任を感じてる。また自分勝手な話だけど、少しでもあの時のお詫びをしたいんだ」
「また難しい事考えてバスケに関わろうとしてんのか、餓鬼のくせに」


今まで黙っていた景虎さんが不意に呟いた言葉に、首を左右に振って笑った。友達の為です、あの頃とは違います。はっきりと伝えた言葉を、納得してくれただろうか。それ以上は何も言わなくなった景虎さんに変わって、リコ姉が少し返事は待ってと言ったから素直に頷きその日はジムを後にした。
数日後、俺は誠凛高校の前に立った。主将さん達と相談した結果、許可が出たらしい。良かった、そう呟き足の横で手をきつく握り締める。待ってろ大輝、俺が必ずそこから引っ張り上げてやるから


絶望なんて、これ以上させはしない


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