帝光中に紺野幸が入学したらしい、その話はオレの耳にもすぐに入った。バスケに愛された存在、なんて大げさ過ぎる地方新聞の記事を読んだのは数ヶ月前くらいの話。
(どれ程の存在なのか、楽しみだ)
けれど何日経っても、彼は仮入部どころか体験入部にすら来なかった


「紺野君、だな」
「へ?」
「どうしてバスケ部に来ない」
「あー、俺ああいうバスケは嫌いだから」


ああいうバスケ、つまり帝光の理念の話か。ならどうして此処に来た、その問いは先回りで学費とか全部免除だったからと答えを言われてなるほど、納得。ならば尚更、バスケ部に入らなければならないはずだ。
オレの問いに今度は少し考えるようにしてから、紺野君は口を開いた


「君はバスケをやってて楽しい?」
「は、?」
「別に仲良しごっことかの意味じゃない、ただ純粋にバスケを楽しんでる?」
「…勝てば楽しいんじゃないか」


これは彼が望んだ答えではない事くらいすぐにわかる。ふーん、と興味が無い態度に溜息を飲み込んでもう一度問い掛けた。バスケ部には来る気が無いのか、と。
入部はしたいけど監督がオレの要望を聞いてくれないなら入りたくないなあ、そんな我儘が通る程の実力が本当にあるのか


「オレと勝負しないか」
「君、PGでしょ」
「…どうしてそう思う」
「うーん、一つは俺に似てるとこがあるからってのとPGは人をよく見てるからか世話焼きがオレの周りには多いんだ」


その返答があったからか、彼には少なからず興味を持ってしまった。監督の説得はオレに任せろ、だから早く入部届けを出せと言って背を向ける。
それから数日後、赤司くーん!と大きな声で教室の窓からオレを呼ぶ存在には笑ってしまう。手には薄っぺらい紙が一枚握られていて、それを見て立ち上がり遅いと呟いた


さあ、飛び越えろ!

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