オレが聞いたのは3軍にすごい選手がいる、という話。実力は監督が認める程で、あの赤司も相当気に入っているらしい。どんな奴だ、そう思って第4体育館を覗きに行けばすぐにわかる。ああ、アイツだ。名前は確か紺野幸。オレが顔を出したせいか少しだけざわついた体育館の中、それすらも気付かない程にアイツは紅白戦に集中していた。
無駄のないパス回しに、ゲームメイクのセンス。アレでどうして一軍じゃないのか、それを問わずにはいられない。チームの底上げの為、なんてのはきっとあってないような理由だろうし


「おい、お前」
「んー?」
「1on1しねえ?」
「‥いいけど、この後まだもう一つ紅白戦やんの。その後でいいかな、青峰君」


にこり、笑ってすぐにまたコートへ行ってしまった背を見つめる。さっきまで別の試合をしていたから疲れてるはずなのに、また始まった紅白戦に参加していた。アイツは得点が入るたびに嬉しそうにチームメイトとハイタッチをしていて、この試合が終わったらまた顔出すかと思って立ち上がりかけた時に見えた光景に息を飲む。アイツのシュートによってスコアに更に刻まれていく得点、さっきの試合ではPGをやっていたはずなのに。
(どんだけだ、お前‥‥!)
さっき以上に試合に見入ってしまって気付けばオレの目の前でひらひらと右手を振る存在。うおっ、と声を上げれば1on1をやるか問われ迷わず頷いた


「はっ、まじかよ‥!」
「やっぱ青峰君は強いな、もう俺へとへと」
「そう言いながらもオレを負かしたのはお前が久しぶりだ」
「うわあ、そんなこと言ってみて―!」


ごろん、体育館の床に寝転ぶ姿を見下ろしながら問い掛けるのはただ一つ。なあ、何で一軍じゃねーんだよ。それに笑って俺はいいの!とブイサイン。
首を傾げるしかないオレに監督を赤司が説得してくれてる、と言うものだからますますわからない。帝光中学の唯一の基本理念。此処では勝つ事が全てだ。今でも充分に実現できているけれど、でもコイツが居ればもっと変わってくるだろ。それにオレは思っちまった、もっと紺野とバスケがしてえ。一緒にコートに立ちてーなって


「だから何」
「一軍に来いって」
「青峰君、昨日の俺の話聞いてた?」
「だからオレとバスケすりゃいいだろーが」


ああ、聞いてなかったのか、よくわかった。そう言って視線を下にまた落とすからその手の中にある小さな本を取り上げる。むすっとした表情を気にせず何度も諦めずに誘うが返ってくる答えは拒否だけ。でもその代わりに部活の後に1on1を絶対すると言う約束を取り付ける事に成功した。
ご機嫌だね、どうしたの?と教室に戻った後にさつきに聞かれたけどちょっとな!とだけ言って机に突っ伏す。
(バスケがまた更に楽しみで仕方ねえ‥!)


「幸、勝負しよーぜ!」
「あのな、三軍はまだ練習してんだけど‥‥」
「げ、まじかよ」
「一軍終わるの早くないか」


実際にはまだ終わっていない、でも自分のノルマは熟したから此処に居る。オレの言葉を適当に流しながら幸ー!と名前を呼ばれ直ぐに行きますとあっさり返事をするから唇を尖らせた。それからまだ終わんねーのか、そればかりを言い続け約十分後。練習終了を知らせる笛が鳴り響き、その姿に駆け寄った。タオルとドリンクを受け取る中ボールを差し出せば、はいはい、ちょっと待ってと苦笑い。いつもありがとう、そう目の前のマネジには微笑むから少しだけイラッとした。
今日は負けねえ、そう言って食らいつく。此処は勝てる、そう思った瞬間に幸の目が変わった。気付けばもうそこに姿は無く、振り向くと既にボールを拾い上げている姿。つい本気出しちゃった、なんて笑う姿にただ笑みを深めた


見つけた、君がきっと光

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