ぶらっと学園内を探索して、大輝達に見つからない内に帰るつもりだった。でも懐かしい声が聞こえて、その足音がすぐに遠ざかる。ちゃんと姿は見えていたからわかる、さつきだ。きっとあれは大輝を呼びに行ったに違いないと確信し、俺はぼんやりと窓の外を眺めた。
(きっと怒鳴られて、殴られるだろうなあ‥)
それから何分か経って現れた存在は今にも泣きそうな顔をしてこっちへ駆け寄って来て、迷わず俺を抱き締めた


「落ち着いたか、大輝」
「ワリ‥」
「いや、俺の方が謝る事は山程あるから」
「‥‥今まで、何処に居た」


何処だと思う、なんて茶化したらそれこそ殴られそうで素直にアメリカに居た事を話した。赤司に言われて行った事、守られていた事、話を全部した後むすっとした表情に見下ろされて首を傾げる。
最初に会いに来たんじゃねーのかよ、なんて小さな子供みたいに拗ねた顔をするから思わず噴き出す。190cmを超える様な男が何て顔してんだって、頭を撫でたらうるせーなんて目を逸らす姿が懐かしい


「でも、思うよ」
「あん?」
「こうやって大輝と話が出来て、やっと俺は日本に帰って来たんだなーって実感した」
「‥‥当たり前だろーが」


お前の居場所はオレの隣以外ねーよ、なんて言い切る姿にはまた笑ってしまう。ありがとう、そう言ってからこっちの様子をずっと大輝の少し後ろから伺っていたさつきに視線を落とした。
そうすればじわっと溢れそうになる涙。あーあ、泣くなよ!そう言い大輝から離れ両手を広げたら、自分の腕の中に納まる存在。優しく背中を叩きながらただいまを言えば、ぐちゃぐちゃの顔が俺を見上げて泣き声が増した。
(お前も辛かったな、さつき)


「幸ちゃん、幸ちゃん‥‥!」
「んー、どうしたー?」
「っ、会い‥たかった、!」
「うん、俺もさつきに会いたかった」


ぎゅ、と抱きしめる腕に力を込める。お世辞にも可愛いとは言えない様な泣き方をするさつきに大輝と苦笑い気味になりながらも、自分の帰ってくる場所があった事に俺まで泣きそうになった。
もう大丈夫だから、一人で抱え込むなよ。やっと泣き止んださつきにだけ聞こえるようにそっと呟いたその言葉のせいかまた泣きそうになるからぎゅーっと抱き締め直すけど、いい加減にしろ!と大輝に引きはがされてしまった


「む、何すんだよ」
「幸はさつきにばっかいつも構いすぎなんだよ」
「そうか?きっとさつきが可愛いからだな」
「‥出たよ、お前の悪い癖」


呆れ気味に落とされた深い溜め息に首を傾げながら、そう言えば部活は?と尋ねたら今から行くんだよと何故か叱られた。ぱあっと嬉しそうな表情になったさつきの、その意味は何となく理解している。
体育館に一緒に入って、ざわつく雰囲気になるほどと更に理解。コイツやっぱ部活行ってないな、なんて思って大輝を仰ぎ見たら1on1しよーぜ!とあの時みたいに笑うから思わず頭を抱えた


本当のお前は何処だ

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