その言葉は突然に、オレへ向けられた。
バタバタと駆け寄ってくる相変わらずな幼馴染の姿に内心は転ぶなよ、と思いつつも興味が無いような態度で欠伸を一つする。バタバタうるせーよ、さつき。そう文句を言ったらそんな事は聞いて無いらしい。何とか落ち着いた呼吸、大きく口を開いた彼女はただこう、叫んだ


「幸ちゃんが、帰ってきたの!」


眠気なんか一気に冷めて、何処で会ったんだとかいつ見たんだとか取り乱している事なんか隠しもせずに問いかける。じゃあ今、この学園に居るっていうんだから驚きは隠せなくて。
(どうして、そんなの嘘に決まってんだろ)
こっち、とさつきに掴まれた手。左手で抱えていたボールが落ちて、それは弾んだ音をただオレの後ろで響かせた


「ほら、見て‥!」
「っ、!」
「此処の制服も着てるの、本当に本物で」
「幸!」


さつきの話を全て聞くよりも先に、動いた手足。真っ直ぐにアイツへと向かう自分が、少しだけ泣きそうな顔をしているんじゃないかと思える程には喉が痛んだ。
窓の外を見つめていた瞳が、オレを捉える。大輝、自分の名前を呼んでくれるこの存在がずっと、恋しくて仕方が無かった。夏の暑さがまだ少し残る頃、幸が姿を消したあの時と似た時期に、オレの前へと幸は戻ってきた
(会いたかった、ずっと、探してた)


「ちょ、大輝、痛いって!」
「少し黙ってろ」
「!‥ごめんな、」


情けない、泣いてる。でもそれ程までにオレにとって幸の存在は大きすぎて。また会ったら怒鳴り散らして、文句をたらふく言ってやるつもりだったのに抱き締めて、ぬくもりを思い出してしまえば何も言葉は出てこなかった。
少し腕の力を緩めて、そっと髪を掻き分け額にキスをする。瞬きを何度か繰り返した後、はにかんだ幸はオレの頬をそっと撫でてただいま、大輝。そう呟いた。ああやべえ、また泣きそうだ


やっと見つけた、オレの光

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