正直言って大輝と会うのは不安だらけだった。確実に何かが変わってきていたアイツを放って置いて、俺はアメリカに逃げたと言っても過言じゃない。赤司の言葉に甘えて、最悪な未来の選択をしてしまった。
(俺にとってはプラスだった、でも、大輝にとってはマイナスだったんじゃないのか‥?)
俺が居なくなった後に変わってしまったのは大輝だけじゃない、皆が変わった。キセキの世代なんて呼び方が、きっと皆を縛ったんだ。そうして、あの圧倒的強さが大輝を更に絶望へと追い込んだんだろう


「お、ストバス!」


こっちにもあるんだな、今までの憂鬱な気持ちが少しだけ晴れる。黙々とシュートを撃つ姿を眺めていれば、彼に近付く姿に目を見開いた。声を掛けると盛大に驚かれている相変わらずの存在感に思わず吹き出してしまい、しまった、と口に手を当てる。
でもそれは少し遅くて、呼ばれた自分の名前に苦笑い気味で手を振った。バタバタと駆け寄ってくる存在に俺からも近づけば、あと少しの距離の所から勢いをそのままに飛びつかれ二人して転倒


「痛いんですけど、テツヤー」
「‥‥」
「‥テツヤ?」
「っ、」


微かに震えた肩に気付いて、それ以上は何も言わなかった。
よっこいせ、とテツヤごと一緒に起き上りぎゅっと抱きしめる。ごめんな、辛い思いさせて。でもお前はやっぱり一人になろうとも戦う事を選ぶと思ってた。きょとん、とした顔で俺達を見下ろす存在に初めまして、そう頭を下げる。
(ああ、もしや彼があのリングの…)


「紺野幸です、よろしく」
「ああ、えっとオレは」
「火神大我君、だよな?」
「お、おお!」


後で会ったぞって連絡してみるか、そう考えながらもどうしてオレを知ってるんだと言いたそうな顔に誤魔化しを含め笑い掛ける。二人はすぐに再会しそうだから黙っていよう、そう思っていつまでも離れないテツヤの顔を覗き込む。
(まさか本当に泣いてるんじゃないよ、な?)
おーい、そろそろ離れろー。なんて言ってみても全く離れる気配がないテツヤに小さく溜め息。ぽんぽん、頭を優しく撫でると聞こえたのはやっぱり泣きそうな声


「今まで、何処で何をしていたんですか」
「赤司に言われてアメリカに留学してたんだ」
「ボクは、君をずっと捜していました」
「‥ごめん、本当に」


きっと誰もテツヤを見つけられなくなったんだ、そう思った。アイツ等は自分の力を自覚して、きっとどんな場面でももうテツヤを頼る事は無くなったんだろう。
何とかテツヤを落ち着かせ立ち上がったオレを、火神君がじっと見つめてくるから首を傾げる。それから何となくわかったわ、とだけ落ちて来た言葉にますますわからなくなって眉間に皺が寄る。何がだ、ああ、もしやアメリカに居たって言ったから知り合いだってわかったって事だろうか


「黒子のバスケへの想いってか、考えってーのか?それ、お前譲りなんだろ」
「へ?」
「確かに青峰が黒子を諦めんなって救ったのかもしれねーけど、オレには黒子の光はお前だったんじゃないのかって思うぜ」
「!俺何も話してないのに、怖いなー」


俺はテツヤを見捨て、大輝に背を向けアメリカへと行った。そんな俺に何が出来るのかは正直言ってわからない。でも見つけなくちゃいけない、大輝を救うなんてそんな大それた事は言わないけれど。でも、今度こそアイツの力にはなりたい。
(その為に、俺は日本に戻ってきたんだ)
もう間違いたくないんだ、あの姿に背を向けたりはしないよ。じゃあ俺はそろそろ行くから、そう言いかけた俺に向かって火神君がぽんっと投げて寄越したバスケットボール。相手してくれよ、強いんだろ?その言葉に重なった面影が、ぐさり、と胸を抉った気がした


覚えているのは、君の大きな輝き

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