周りの歓声が痛いくらいに木霊する。その中にある絶望も希望も、何もかもが混ざり合ってオレに突き刺さる。もう止めてくれ、そう言って耳を何度も塞ぎそうになった。バスケへの想いが冷めていく度に、幸の存在が霞んでいく。まるで出会いの全てが嘘だったかのようにオレの中からじわりじわりとアイツは居なくなっていった。
(もう、お前の声すら忘れてしまいそうだ)
全中三連覇を成し遂げたって、キセキの世代と呼ばれたって、オレの中に残ったのは何も無い。唯一挙げるとしたら、そうだな、絶望にだけはしっかりとしがみ付かれてるかもな


「青峰君、何処行くの!」
「あー?屋上に決まってんだろ」
「授業にはちゃんと出なきゃ、もうすぐテストだって」
「いいんだよ、そんなの別に」


オレはバスケさえしてりゃ文句は言われねえ。その言葉に馬鹿、とさつきの泣きそうな声が廊下に響く。わかってるよ、そのバスケすらまともにしてねえ。それでもオレは誰にも負けない、オレに勝てるのはオレだけだ。
どうやら追い駆けてくるのを諦めたらしいさつきをそのままに、屋上へ続く扉を開ける。憎らしいくらいに清々しい青空へ意味も無く舌打ちをして寝転んだ。その日に見た夢は、あまりにも懐かしすぎる幸との出会いの夢。目覚めとしては、最悪だ


「へえ、誠凛かよ」
「‥‥青峰君、言っておくけど火神君の足は」
「はーいー?オレにそんな事は関係ねーだろーが」
「絶対に会いに行っちゃ駄目だからね‥!」


行くな、そう言われてしまった以上は行かない。なんて性格はしていない訳で、オレは勿論だがさつきの情報網を頼りに火神を捜した。オレに対抗できるかもしれない存在、とまではいかないが退屈凌ぎ位になれば上出来だ。そんな考えすら甘いと言わんばかりに、火神は足の分を引いても話にならなかった。
お前の光は、淡すぎる。
なあ幸、オレはお前が眩しいと言っていた頃のオレと違うか。周りが変わったのかオレが変わったのか、きっと答えはどちらも当てはまる。でも、一番の原因になったのはお前なんじゃないかって思ってしまう自分が嫌いだ


「お前が居れば、オレは変わらなかったんじゃねーのかって、思うんだよ‥‥」


絶望を積み重ねる程に、バスケへの想いも冷めて。帰り道に会ったさつきに火神に会いに行った事を言えば叱られたけど、こんなオレの行動すらもお前はきっと予想してただろ。もしかしたら、なんて無い。さつきも期待する事は止めろ、他人なんかに何も期待するな。
インターハイ予選の決勝リーグ、初戦の相手はテツのいる誠凛高校。けどそんな事はどうでもいい、オレはまた一つ勝ちを得ていくだけ。あのテツの目、言葉の一つ一つがまるで幸みたいで、胸の奥の方がズキズキと痛んだ


面影ばかりがオレを惑わす

prev next
back


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -