その年の大会は何かが変わり始めてしまった青峰君の圧倒的な力で勝ち、優勝をした。幸君も試合には出ていたけれど、赤司君の言い付けなのか出場機会は多く無くて。試合が終わる度、青峰君の中に積み重なって行くのは幸君への執着ばかりだった。
そんな中で夏休みが明けた日の最初の朝練。少しまだ眠たい目を擦りながら体育館に入ったら、いつも真っ先にシュートを撃っているはずの姿は何処にも見当たらず首を傾げた。始業式にも居ない、その日の練習にも居ない。風邪でも引いたのだろうか、そんな曖昧な考えを長くは持っていられなかった


「もう一週間っスよ、おかしいっス」
「赤ちんに聞いてみる〜?」
「話してくれるとは思えません、でもこのままじゃ‥」
「黒子っち?」


テツヤ、ごめんな。不意にフラッシュバックしたあの日の帰り道の言葉。何も言わなかったボクをそれ以上気にする事無く、黄瀬君は取り敢えず体育館に行こうと促すからそれに頷いた。
何だか少しだけ中が騒ついている様な気がしていたら、大ちゃん止めて!そう叫ぶ桃井さんの声に、慌てて中へ飛び込んだ。幸は何処に行ったんだよ!と赤司君に掴みかかろうとする背に駆け寄り落ち着いて下さいと必死に腕を掴む。けれどボクでは勿論抑えきれず、紫原君や黄瀬君も青峰君を掴み抑えた


「幸の事はオレも知らない」
「見え透いた嘘吐いてんじゃねーぞ、赤司!」
「居なくなった、それだけだ」
「‥‥じゃあ、どうして幸君はあの試合の後に泣きそうな顔をしたんですか」


さあ、見ていないからわからないよ。なんてにこやかに微笑んで、響くのは練習再開の掛け声だけ。遅れて来たボク達へのペナルティーは特に無くて、ただもう二度と幸君の事についてを聞く機会を失ってしまった。
それから皆も、あっという間に変わっていった。中でも青峰君の変化は、まるで坂道を転がり落ちる様に早く、性急で。そうしてボクは全中三連覇の後にバスケ部を辞め姿を消した。彼が居なくなったこの場所で、もう誰もボクを見つけられはしない。静かに転がったままのボールを拾ってシュートを撃てば、ゴールに嫌われたそれはあっさりと弾かれ遠くへと行ってしまった


さよならも告げず、君は消えた


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