バスケ留学をする気は無いか、突然の問い掛けに瞬きを繰り返した幸に一枚の紙を差し出す。監督やコーチは此処に幸がいる限り、何度でも一軍への昇格を促すだろう。優し過ぎるお前はそれをいつか受け入れてしまうはずだ。
(二度目はもう、本当に壊れるだけぞ)
幸が望んだ、そうなってしまったらオレでも簡単に二軍や三軍へ逃がしてやる事が出来なくなる


「幸さえ良ければ、だが」
「‥‥一つ不安がある」
「何だ」
「大輝にきっとこれから何かある、その時傍に居てやりたいんだ」


ああ、またこれだ。ジリッと焦げ付く胸に気付かない振りをするのは疲れる。だけどオレは大輝の事は任せておけばいいと笑ってみせるのだ。少しだけ不安を顔に滲ませたまま、分かったと頷き親と相談してみるよ。そう言って紙を四つ折りにした幸はスボンへとそれを仕舞う。
オレは幸を守りたい、これだけは忘れるな。そう言って頬に触れればありがとう、と漏れる小さな声


「いつもごめん、赤司には迷惑ばっかかけて」
「幸だけは特別だ、何度も言わせるな」
「ん、わかってる」
「良い返事を期待してる」


それだけを伝え幸から手を離し、微笑む。ちなみにこの留学については他言無用だからな、と付け加え背を向け歩き出した。
それから幸から留学をすると言った期待通りの返事は思っていたよりも早く聞くことが出来て。行って来る、大輝を頼んだ。そう悲し気に下げられた眉尻にそんな顔をするなと呟いた。信用しているようでされていない事を知っているからこそ欲しくて、自分の支配下に置きたい欲に駆られる


「夏の終わりには行ってもらう、いいな」
「ん、了解」
「‥青峰にも、言うな」
「分かってる」


監督にはオレから話す事も伝えて、迎えたのは夏休み。幸にとっては中学最後となる、そのせいなのかは知らないがオレの知らない間に一軍へとまた昇格をしていた。ごめん、曖昧に笑った視線は少しの異変抱えた青峰へとただ真っ直ぐに注がれていく。
(その視線はどうすればオレに向く?)
留学も昇格も決まった事だ。オレは何も言わないと心に決めて夏大も勝つぞ、そう伝えるだけで精一杯だった


君の視線が欲しい、我儘なオレ

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