幸が居なくなった一軍でオレがアイツみたいな過剰なノルマをやれと言われる事は無かったし、テツの練習量もあの頃に比べると少し減った気がする。
(テツは幸の力を引き出す為だけに使ってたのかよ‥)
学校には当然来ているから顔を見に教室へは何度も足を運んだ。幸曰く、今は自分にバスケをする場所を教えてくれた人の許でゆっくりと身体を治そうとしているらしい。部活へは春ぐらいに戻る、そう聞かされ小さく頷いた


「また幸が戻ったら、一軍に無理矢理上がらせる気じゃねーよな」
「オレがそれを許すとでも?」
「信用してんのか、監督を」
「幸は正直に言って今のバスケ部を精神的にも支えていた。幸が居れば勝てる、それは悪い考えではないからな」


それでも幸を二軍へ降格させ、更には部活に来ない事を許可している。赤司の考えがわからず、眉間へと寄った皺。それを見て小さく笑う赤司は幸はオレに任せておけば良い、そう言い切った。
ああ、牽制かよ。なんて思いつつ、オレはオレなりに幸を支えるつもりだと伝えたらきょとんとされてしまったから思わず次の言葉に詰まる


「青峰に何が出来る?」
「っ、それは、」
「想いは自由だが、あまり幸に負担になるような事はするな」
「んだよ、その言い方‥」
「幸を一時でも追い詰めたのは、お前でもあるからな」


俺を忘れろ。
不意に思い出した言葉に目を見開いた。記憶にはちゃんとあるのか、感心だ。そう言った姿に背を向ける。ふざけんなよ、腹の中でぐるぐると回る負の感情に舌打ちをした。赤司には幸を救う力がある、それに頼ったのは間違い無くオレ自身だというのに。体育館を見渡しても何処にも見つかるはずの無い幸の姿に、ただ俯いた


「大輝!」
「?幸、どうし」
「さつきは!」
「は?」
「さつきは来てないのか」


少し焦ったような様子に、さっきすれ違ったと直ぐに答えたらありがとう、そう半ば叫ぶようにしてまた走り出した幸に首を傾げた。ホント足速ぇーな、そんな的外れな事を考えていれば、よぉ、そう聞こえた声に嫌々だが振り向く。
何してんだって取り敢えず問い掛けてみれば幸をちょっと探しててなァ。その言葉と一緒に嫌な笑顔を見せるコイツに表情が歪んだ。
(また幸に何かする気かよ、)


「幸なら走ってもう向こうに行った。お前じゃ追いつけねーよ」
「まあそれなら仕方ねぇよな、またにするわ」
「‥やたらとアイツに執着してんな、お前」


理由はわかる、でも聞かずにはいられなかった。どうせコイツも赤司に牽制されてるはずだ、それでも幸を追う理由が知りたい。楽しそうに笑って、灰崎は幸が欲しいからだとだけ言ってオレに背を向けた。お前だってそうだろ、顔も見ずに問われたそれに目を見開く。
自分のモノにしたい、だから欲しい。それだけだと言わんばかりの灰崎にそれ以上は何も言えなかった


欲する理由は単純明快


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