ボクでは連れて来る事が出来ませんでした、その言葉を聞き監督やコーチにオレが行くと言って体育館へ向かった。いつも通りボールを抱えて座り込んでいる姿を想像していたのに、コートのど真ん中で静かに転がるボールの傍に倒れる幸を見つけ、血の気が一気に引く感覚を生まれて初めて知る。
名前を叫んで駆け寄り、抱き起こした身体は馬鹿みたいに軽すぎた。
(これで身長が180越えてんのか、ありえねーだろ‥!)
「貧血と過労だと思うわ、起きるまでそっとしておいてあげて」
「‥‥」
「‥監督さん達には先生が話に行くわ、傍に居てあげてくれるかしら」
「あ、はい」
ぱたぱたと遠ざかる足音を聞きながら、そっと頬に触れる。ひやり、とした幸のいつもよりずっと低い体温に下唇を噛み締めた。
赤司が今日、監督に話すとあの日の試合後にオレに呟いたのは間違いなく降格の話だ。幸の事になるといつも以上に頭の回転が早くなる赤司は怖いと言うよりも何処か危うい。それでも、きっと二度とコイツを一軍に上げる事を許さないだろうアイツを間違いなくオレは頼りにしていた
「あら、一回起きたの?」
「!」
「ふふっ、仲が良いのね」
「どーも」
大輝が見える場所に、居たいんだ。その言葉を思い出しぎゅっと抱き締める力を強めると不意に後ろから掛けられた声。慌てて振り向けば、保険医がにこやかに微笑んでいた。
見られた、そう思って幸を寝かそうとしたのに掴まれたままのジャージには頭を抱えるしかない。
(可愛い事をこのタイミングですんなよ‥!)
「青峰君が辛くなければ、そのまま寝かせてあげて」
「え、?」
「最近どうしても寝れてないって言ってたのよ、紺野君」
だから、寝かせてあげて。そう言われたらこのままで居るしかない。
約一時間後、目を覚ました幸を迎えに来た赤司から降格だ、そう告げられた姿を見つめる。また嫌だなんて騒ぐかと思ったけどいらない心配だったらしい。ほっ、と小さく息を吐き出した。わかった、ごめんな。悲し気に眉を下げて落とされる言葉、もう無理をしなくていいからなと赤司は当たり前のように幸を抱き締めた
ジリッと胸が焦げ付いた
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