03
「赤司くんに近付かないで‥!」


案外早かったなあ、なんて呑気にその言葉を自分の中で噛み砕く。気付けば彼のサポートを始めて約一ヶ月半、噂も色々と回っていたけど気にしてはいなかった。
(だって私は私だ、言われた事をやるだけの存在だし)
桃井ちゃんに文句は無くて、私に文句があるのはつまり見た目からのスペックの違いだ。言われなくてもわかってる、だからぼんやり彼女達の文句を聞いていた


「だから、離れて!」
「私は赤司に言われて今の仕事をしてる、文句なら彼にどうぞ」
「どうしてなの、どうしてアンタなんかがっ‥、!」
「それも私に言われたって預かり知らぬ話だ」


知らない、わからない。だって私は本当に全てが突然で、今があるんだから。ぎゃあぎゃあ騒いでいた二人の後ろで控え目に立っていた女の子がふらり、私の目の前に立つ。振り上げられた手を見て、目を閉じた。
乾いた音が盛大に響いて、ジリジリと痛む頬はきっと赤いだろう。涙を流す彼女を庇うようにして去って行く背に、何も言えなかった


「‥随分と、綺麗な顔だな」
「はい、これ言われてたデータ」
「ああ。で、誰にやられた」
「次、紅白戦だよね。これ監督とコーチ達から預かってきた」


話を聞かない私に、呆れたように溜息を吐き出した赤司からさっさと離れる。頬にはあれから保健室に行った時に貼られたデカすぎるような湿布。心配してくれた桃井ちゃんにだけは話をしておいたけれど、赤司にはわざわざ話す事じゃないと判断した。
私の顔を見ながら笑ってくれた青峰に安心してちょっとだけ泣いてしまい、汗だくなTシャツで乱暴に涙を拭われる。
(普通に考えて力一杯殴られたんだ。痛かったし、怖かった)


「赤司には言わねーのか」
「ただでさえいろんな事抱えてるんだよ、こんな小さな事は言えない。それに、」
「それに?」
「‥何でも無い」


首を傾げる青峰へ曖昧に笑って、誤魔化した。それに、その言葉に続くのは音にしてはいけない気がして。
(甘えるな、ちゃんとわかってる)
それから紫原君が何故か山程お菓子をくれて、ちょっぴり元気が回復。明日のラッキーアイテムなのだよ、と緑間君も私の星座のラッキーアイテムらしいモノをくれて、頑張ろうと決め赤司に駆け寄った


愛される君は、遠い人




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