13
目覚めは自分でも驚くくらいに良好だった。おはよう、と言って微笑む睦の頬に徐に手を伸ばす。寝惚けてるのかー?そう言いながら触れられる自分のそれは、容易く熱を帯びた。起きているよ、小さな声で伝えて目蓋を下ろす。まだこの幸せな時間に浸っていても、良いだろうか。
そうして少しの間は穏やかな時間だ、なんて思っていたのに。やっと見つけたっス!その言葉の語尾に浮かんだ相手はただ一人、ちょうど良い機会かとそのままにまたゆっくりと目蓋を持ち上げた


「五月蠅い、黄瀬」
「あー!てか、何で睦っちが膝枕とかしてるんスか!」
「五月蠅いよ、黄瀬」
「そして何で二人して同じ言葉しか言ってくれな‥うわ〜ん、黒子っちー!」
「五月蠅いです、黄瀬君」


黒子のトドメにより黄瀬が静かになったところで欠伸を一つ、起きる気になった?と睦からの問いに少しだけ間を開けて頷いた。さっさと起きろよ、赤司。棘のある言い方、身体を起こしてその相手を見上げた。青峰、今日は随分機嫌が悪そうだな。知っていての物言いは、挑発に近いものだろう。
(ああ、オレにとっては牽制だ)
きょとんとしたままの睦に、ありがとうと伝えたら少しだけだが赤くなる顔はいい気分だ。その表情見れるのが、自分だけであればいいのに


「立てるか、睦」
「青峰、大変だ」
「あん?」
「足が痺れた」
「ったく、教室まででいいか」


おーう!なんて慣れた様子で睦の前にしゃがみ込んだ青峰の姿に深い溜息。仲が良い、わかってはいたけれど彼女に容易く触れるなと思ってしまう。足が痺れた原因を作ったのはオレだ、ならそれを対処してやるのだってオレの仕事のはずなのに。視線が高くなった彼女は、此方を見ようとはせずに青峰の頭を叩き出発だー!と黄瀬達と騒いでいた。
どんまいです、赤司君。楽しそうな黒子はそう言ってオレの横を通り過ぎていく。残されたのはオレと緑間、仕方ないかと溜息を吐き出して歩き出した


「わかっているのなら、捕まえておくのだよ赤司」
「緑間はいつからそうやってお節介になったんだろうな」
「茶化すな」
「‥受け入れて、くれるのか」


自分がこんなに弱気になるとは、思ってもいなかった。全てが計算された、自分の手のひらの上で起こっていることならいいのに。いつもオレの計算をいとも簡単に、彼女は狂わせてしまう。
緑間へと視線を上げて、小さく微笑む。オレは必ず、彼女を手に入れる。いつまでも今のまま、過ごしていたって意味などないのだから。取り敢えず青峰は今日の練習、外周を追加だ。その呟きを残し、屋上を後にした。執着だろうとなんであろうと、睦の存在だけは絶対に誰にも渡せないのだから


掴んだら、二度と離せない





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