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最初は常にアンタ、だった。それから彼女に何か気持ちの変化が生まれたのか、赤司、とオレを呼ぶようになって今に至る。そんな事を考えながら、気付けばオレが彼女を知ってもうすぐ一年が経とうとしていた


「おー睦、部活見ていけよ!」
「ドラマの再放送と、青峰のバスケ姿かー」
「勿論オレだろ」
「うん、ドラマの再放送」


青峰が自分から声を掛ける女子は珍しい、なんて思っていれば薄情女!そう叫ぶ声。青峰越しに手を振る彼女を視界に捉えた瞬間、手に入れたい。自分の傍に欲しいと感じた。
(それからだ、睦を目で追うようになったのは)
舞台も準備も整えた、ほら、オレから手を差し伸べれば彼女はきっと頷いてくれるはずだったのに


「追いかけて来るな!アンタに用は無い!」
「オレがあるんだ」
「私には無いんだよ!」


逃げる彼女と、追い掛けるオレ。
別に本気を出せばすぐに捕まえられただろうけれど、睦の身体能力は中々に高かった。窓から飛び降りたり、廊下を人を避けながら走る後ろ姿に自然と笑みは深まる。オレから必死に逃げようとする姿は、面白い
(此れで帰宅部か、惜しい人材だ)


「追い掛けっこは終わりだ、諦めろ」
「チッ‥」
「女子が舌打ちなんて」
「アンタには!関係無い!」


言う事は、聞く。嫌々の納得なのは誰の目から見ても明らかだった。けれど、オレは彼女を手に入れたんだ。それからも度々逃げ出そうとする姿を捕まえては追い詰めて、微笑む。青峰に諦めろと言われると大人しくなるのがつまらなかったが、小学生からの知り合いならば少しくらい目を瞑ろう。
随分と気に入ったな、そんな言葉に振り向き視線を上げる。その先には緑、ああ、緑間かと小さく笑んでからまた視線を手元へ戻した


「仕事が出来る、オレの右腕には有り難いな」
「それだけか」
「‥何が言いたい」
「先程アイツを見掛けたが知らない男が隣に居たのだよ」


徐にその言葉で振り向いた。その瞬間に緑間のやはりな、なんて言葉が聞こえて今日はオレが一本取られたかと呟く。嘘だろうと本当だろうと、睦の隣に立つ事はオレ以外許さない。
(嫉妬は醜いのだよ、か。そんな事は言われなくてもわかっている)
席を立ち、駒を一つ投げて落ちて来たそれを掴む。言ったはずだ、お前だけはオレのモノだと


「付き合ってはいない」


目の前の女子生徒は睦の頬にあった大きな湿布の原因を作った人間だという事はすぐにわかった。けれど彼女が黙っているなら、今は手を出さないでいようと決めたのが甘かった。その場所を欲しいと望む、それを許す訳がないだろう?その言葉とは裏腹に、睦はオレの隣から姿を消した。
戻ってきた一週間後、やっぱり彼女を連れて来たのは青峰。心がジリッと焦げ付く感覚に睦の手を掴み、一週間分の仕事が溜まっていると言って自分の近くに引き寄せた。早く、オレだけを見ろそう願いを込めて


ずっとキミだけが特別




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