▽ プロローグ
夜も9時を過ぎた頃。
小金井の明るい声が部屋に静かに響く。
「前回は順番決めるのに時間かかったからさ〜今回はなんと、俺が事前にサイコロで決めちゃいました!!」
誉めてくれと言わんばかりの宣言に、
「でかしたコガ!」
と日向がその手際のよさを誉めると
「でしょでしょ〜!!」
そう、小金井が満足げに鼻を膨らませた。
「……そのサイコロ、どこから」
「俺が貸したッス!」
「なんや自分ら、まだその遊びしよったんかいな。そこまでやられるとワシも混ぜてほしくなるわ〜」
「今吉はダメだ。ズルするだろ」
「つれへんわ〜笠松? お前もトランプやと、ズルするやろ、戦略としてな」
「あああもうっ今はその話、いいッスから!!」
サイコロを用いたすごろく遊びの件から話が飛躍し、互いのPGとしての達の悪さを口にしようとする今吉の細い目が笠松を捕らえた―――焦った黄瀬が、咄嗟に二人の間に入って会話を本筋へと強制的に戻す。ここで喧嘩されてバスケで決着〜となってしまっては意味がない。そりゃバスケは一緒にしたいがそれを今吉という他人にとられることまで許してはいないのだから。
「すまんな〜すぐ熱くなってまう性でな」
と今吉がやんわり謝りながら諏佐の隣に戻っていく。
懐中電灯だけが付けられた仄暗いそこでは、今吉の眼鏡のレンズがキラキラと光っているように見えた。それはまるで得体の知れないナニカが潜んでいるように、降旗には思えた。
かくして怪談大会は再び始まった。
本当にあった怖い話でも、しませんか?
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