朱嘆の華しゅたんのはな 永遠の恋とわのこい朱嘆の華 第一章7
聞こえたのは、獣の呻き声……。
いる。きっと、すぐ近くに……
───どうして。どうしてみんな、誰も助けてくれないの?
あたしは何のために……ここに来たのかな……
元の世界での暮らしは大変だったけど、……ここで死ぬよりは ましだと思う。
───助けて。お願い……誰か。
ガサッ、ガサガサッ
また、葉っぱが大きく揺れて、赤い塊がゆっくりと出てきた。
───ああ。もう、終わりなのかも……
こんな状態でも、その塊が とても大きな猿のような獣だと 見てとる。
一歩一歩、それはあたしの方に近づいて来て、突然、ふと止まった。
『───??』
死を覚悟したあたしが見たのは、少し震えている 赤い獣。
あたしと目が合っている。どう見ても、あたしの方が弱いのに。
その獣は、少し後退りした。
『??……』
獣の震えは大きくなって、でもあたしと合った目は逸らさない。
────その時だった。
突然、その大きな猿は、横から現れた同じく赤い塊によって、押し倒された。
その間に、誰かがあたしの背後にまわって、結ばれた紐をほどく。
「今のうちだ。───走って!!」
強い力で腕を引っ張られて走り出す。
『あっ!、』
だが、深刻化した風邪のせいなどで、あたしはすぐに転けてしまった。
「───!!」
振り返ったその人は、慌てて駆け戻り、あたしを横抱きにして、また走り出す。
しばらく走ったところに、大きな窪みがあり、そこに 滑り込む様にして入った。
あたしの口をしっかりと手で塞ぎ、周囲を確認する その人。
やがて、赤い塊がこちらに走り寄って来て、あたしは身震いがした。
それに気づいたのか、その人は あたしの口から手を離して、小さく言う。
「大丈夫。……行くよ」
どこへ、と聞く事もできずに、その赤い獣の背に 引っ張り上げられる。
よく見ればその獣は、先程 大猿を押し倒した方の獣で、だから少し 安心できた。
するとその獣は、駆け出したかと思うと 宙を飛び始める。
『Σえ……っ?!!』
「、怖い?」
後ろから、あたしを支える様にして乗っていた 人の声が聞こえる。
『え、あの……でも、、飛んでる……』
「?……」
あり得ない様な光景と、恐ろしい体験、重なった疲労に 体調の限界……
何もかもが一気に押し寄せ、あたしはまた、フッと気を失ってしまった。
「?!───熱い……。
ろくた、急いで。これは結構 危ないな……」
気を失った少女の額に手を当て、跨っていた天犬に話しかける。
天犬───ろくたは、その通りに 速度を上げて 宙を滑空していった。