。。。空色キャンディ。。。




電車に乗り、絵画展の会場に向かう。

最寄り駅から歩いて5分の所にあるホールが会場だった。

受付でチケットをみせて中に入る。



その途端、空気が変わった気がした。



人はいるが、話し声は聞こえない。シンとしていてどこか張りつめた空気。

その空気に飲み込まれて僕たちも自然と口を利かなくなり、そのままゆっくりと絵を眺め始める。

そうしていると、まるで時が止まってしまったかのように感じた。

こんな場所で、何か静かな曲をピアノで弾いたら合うのではないかなどどぼんやりと考えた。

かなでさんはというと、ひとつひとつの絵を興味津々といった感じでみている。

僕は目の前の絵をみつつも、ある目的の物を探していた。

実は今回ここに来たのは前にかなでさんに話した以外にも理由があった。

そして僕は、それをみつけた。



「かなでさん、あの絵みて」と僕は小さめの声で言いながら、1枚の絵を指差す。

「えっ・・・わぁ・・・」とかなでさんはそれをみて言う。

その絵は、金色に輝く草原を描いた物だった。まるで―――

「初めて一緒に演奏した時にみえた景色みたいですね・・・」と彼女が呟く。

そうなのだ。僕たちが初めてあの練習スタジオで会い、懐かしい土地の想い出を一緒に演奏した時にみえた光景によく似ている絵だったのだ。

「この前たまたまみたテレビ番組でこの絵が紹介されていてね。今回の目玉の絵画らしいんだ」と僕はかなでさんに説明する。

「じゃあ先輩はこの絵があること、知ってたんですか?」

「そうだよ。ただ、君にこのことを教えてしまったら、つまらないかと思ってね。黙っていたんだ」

「確かに、知らなかった分、みた時にワクワクしちゃいました!ありがとうございます」と笑顔で言う。

かなでさんは周りに迷惑がかからないようにと声えを小さくしてはいるが、それでも楽しそうだということが十分にわかった。

僕にもその楽しい気持ちがうつってくる程だ。

彼女が喜んでくれるとこんなに嬉しいものなんだと実感する。

僕たちは、もうしばらく金色の草原を眺めた続けた。





絵画展の会場を出る。

「この後どうするか特に決めてないんだけど・・・どこか行きたいところはある?」

「えっと・・・買い物に行きたいです」

「買い物だね。どこに行こうか?」

「うーんと・・・」

僕たちは相談をしながら歩き出す。





その後、かなでさんの希望でアクセサリーや小物のお店に入る。

かなでさんは「可愛いものがたくさんあります」と、とても楽しそうにしている。

そうやって喜んでいるかなでさんが1番可愛いんだけどな・・・と僕は心の中で思うが、口には出さない。

口に出せばきっと君は、「せっ、先輩!こんなに人がいるところでそんな恥ずかしいこと言わないでください!」と言って頬を染めるに決まっていて。

君の照れた表情を見られるのは僕だけでいいのだから。



その時、「あっ、これ可愛い」とかなでさんが言う。彼女が持っているのは、プラスチック製のキューブの中に四葉のクローバーが入っているものが着いたストラップだった。

「へぇ・・・四葉のクローバーか」

「はい。こういうものって持ってると、なんとなくいいことありそうな気がするんですよね」

「じゃあせっかくだから、お揃いで買おうか?」と僕は聞く。

「いいですね!・・・・・・嬉しいです、お揃い」とかなでさんは最後の方、小さな声で恥ずかしそうに言った。



僕はかなでさんからお金を預かり、2人分のストラップを持ってレジに行く。

その途中、ある物が目に入る。

「・・・・・・」

手にとって少し眺めてから、僕はそれもレジに持っていった。





3に続く
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