。。。空色キャンディ。。。
(ふー、疲れたー・・・今日はこれくらいにしとこうかな)
夕日が差し込みオレンジ色に染まっているオーケストラ部の部室の中、私―――小日向かなでは1人で練習していた。
今日は部活のある日ではないので、他の部員はいないのだ。
自分以外誰もいないこの部屋は、ひどく静かでどこか感傷的な雰囲気をかもし出している。
夏の全国大会で優勝してから気づけば一ヵ月以上たっている。
辺りは秋模様といった感じだ。
3年生達はほとんど部活にくることはなくなっていた。
そのため律くんに選出され、私が部長に、響也が副部長になった。
大会で優勝を収めた私たちが部長・副部長になることに反対するものは誰もいなかったため、わりとすんなり決まった。
私自身、部長という立場に不安もあった。けれど響也が嫌そうにしながらも副部長をやると言ってくれたので、部長として頑張っていくことにした。
部員のみんなはもちろん、響也が支えてくれるおかげで、なんとかやってこれている。
(でも響也には副部長としてだけじゃなくて・・・彼氏としても支えられてる・・・な・・・なんて)
星奏学院に転入してきてから、いつの間にか私は響也のことを幼馴染としてでなく、1人の男の子としてみるようになっていた。
そして大会の日の夜。私たちの関係は幼馴染だけでなく、恋人という関係にもなった。
響也はいつも1番近くで私を支えてくれている。
大好きで、大切な人。
(さて、片付けも終わったし帰ろ。・・・あれ、この楽譜・・・)
私は机の上に置きっぱなしにされていた楽譜を手に取る。
みてみると今練習している曲のヴァイオリンの楽譜だった。
(この書き込み・・・響也の字だ。忘れて行っちゃったんだ)
私は自分の学生鞄の中に響也に楽譜を入れて、部室を後にした。
寮に着き、まずは自分の部屋に行って着替えを済ませる。
そして響也の楽譜を持ち、部屋を出る。
(響也どこにいるかな・・・)
ラウンジの方へ行くと、ちょうど響也もラウンジにくるところだったらしい。
「あっ、響也ー」
「あぁ、おかえり。どうした?」
「部室に楽譜忘れてたよ。響也のでしょ?」私は言いながら響也に走って近づいて行く。
その時、私はつまづいて倒れそうになる。
「危ない!」
響也が私を支えようとする。
一瞬、唇になにか温かいものが触れた。
響也に抱き止められ、私は転ばずに済んだ。けれど・・・
(今触れたのって・・・響也の唇・・・)
「・・・かなで?」と響也が動けずにいる私を呼ぶ。
「あっ、えっと・・・・・・ごめんね・・・ありがとう・・・」
私は響也と目を合わせないようにしながら、なんとかそれだけ言う。
「かなで、今・・・」と響也が言う。
私は慌てて「これ、楽譜。忘れちゃだめだよ。じゃあ私、部屋戻るから!」とだけ言って楽譜を渡し、自室へと走り出した。
部屋に入り、そのままベットの上に倒れこむ。
(いいい今、響也と・・・キス・・・しちゃった・・・!)
私は自分の口を手で押さえた。顔は火照り、熱くなっている。
(キスなんて初めてだよ・・・・・・完璧に事故だけど・・・)
「・・・響也もわかってたよね・・・さっきなんか言おうとしてたし・・・」
付き合うようになれば、いつかはすることなのはわかっていた。
けど、こんな形だなんて思ってもみなかった。
(別に、したくなかったってわけじゃないけど・・・いきなりすぎるよ・・・)
「はぁ・・・響也と顔合わせにくくなっちゃったなぁ・・・」
私は悩むしかなかった。
⇒2に続く