28.生きている意味
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つい最近、あの女の夢を見た。
あれは予兆だったのだろうか。
この信じられない結末の。
「おい、どうなんだよ!?」
「今話しかけないで!!」
シカマルとサクラの切迫した声が飛び交う。
サクラといのは即座に治療に取り掛かっていた。
手際良く処置が施される。
胸を看るために服を開くと、いのがプレゼントしたというネックレスが胸元から零れた。
急所を中心に患部を調べる。
その表情が曇り、やがて険しくなるのにそう時間はかからなかった。
「サクラ…」
いのが縋るようにサクラを見つめる。
サクラは苦しげな、悔しげな表情でいのを見つめ返した。
二人の間に漂う重い空気は、一つの事実を物語っていた。
シカマルは信じられない思いでこの光景を眺める。
張っていた肩の力が抜けていった。
「ウソだろ…」
里に掛け込んできた親子の話を聞いて、付き添っていったのがマガナミだと聞いて、なんとなく、嫌な予感がしていた。
傷つけられているかもしれないとか、相手が多勢かもしれないとかそんなレベルではなく、もっと根本的な、定められた理の一端に触れているような、そんな奇妙な感覚だった。
だが、それはこんなことじゃない。
もっと別の何かだ。
こんな結末、認めない。
辺りが絶望感で埋め尽くされていく。
アスマとカカシも険しい表情を浮かべたまま沈黙していた。
が、カカシがピクリと反応する。
「意識が戻ったみたいだ」
シカマルは反射的にマガナミの側にしゃがみ込んだ。
「マガナミ!」
「シカマル…」
「無茶しやがって!」
マガナミは力なく笑った。
「ごめんなさい」
零れる言葉はすぐにも消えてしまいそうなほど儚い。
呼吸の合間からやっと紡ぎ出している状態だ。
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