生きている意味

27.夏の終わり


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チコはご機嫌でスキップをしながら道を歩いていた。

今日は母と兄と、お弁当を持ってピクニックに出かけるのだ。

久しぶりのお出かけだったので、チコも兄もはしゃいでいた。

ちょろちょろ動き回るチコの後ろで、兄のカケルは大好きな冒険ものの歌を歌っている。

さっきまで自分のことを「ピーピー騒いでガキだなお前は!」と小馬鹿にしていたくせに、結局自分だって楽しくて仕方がないのだ。

「ほら、あの分かれ道を左に行ったところよ」という母の声にきゃあと歓声を上げて、チコは走り出す。

走り出した途端に、目の前がぐらっと揺れた。

強い力で上の方に引きずり込まれる。

チコは何が起きたのかわからず、キョトンと辺りを見渡した。

空の青が今まで見たことがないほど近くて、目を輝かせる。

すごい!

お空がこんなに近い!

ここはどこなんだろう?

更に視線を動かすと、すぐ近くに木の枝があった。

あれぇ?

木の上にいるのかなぁ?

おかしいなぁ。

さっきまで地面にいたのに。

その時、下の方から悲鳴が聞こえてきた。

この声は母の声だ。

母に何かあったのかと、チコは声のした方を見た。

ずっと下の方から母と兄がこちらを見上げて叫び声を上げている。

チコ!チコ!と必死に自分の名前を呼んでいた。

お母さんもお兄ちゃんも、何であんなに恐い顔をしてるんだろう?

そこで初めて、チコは自分が自由に動けないことに気付いた。

自分の胸の前に回された腕を見つけて、後ろを振り返る。

目の前に目つきの鋭い男の顔が見えた。

チコは驚いて悲鳴を上げる。

その隣にはもう一人同じ格好をした男の人が立っていた。

チコは自分が危険な状況にいるのだと直感で悟り、身体を硬直させる。

その身体がガタガタと震えてきて、チコは堪え切れずに泣き出した。

チコを抱えていない方の男が冷たく言い放つ。

「木ノ葉の忍をここまで誘き出してもらおうか」


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