25.サワトと第十班
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「サワト!マガナミ!」
サワトとマガナミは、同時に声のした方向を振り返った。
そこには、シカマル、チョウジ、いの、アスマ、第十班のメンバーが揃って駆けつけていた。
「おい、マガナミに余計な真似してねーだろーな」
けん制のこもったシカマルの低い声に、マガナミは慌てて首を振る。
「されてない。何も」
シカマルはすぐに納得して表情を緩めた。
「そうか」
「サワト…」
いのは、いつもの元気な彼女からは想像もできないほど弱々しい声を漏らした。
サワトは僅かに動揺を見せる。
しかし、すぐに表情を繕い、四人と向き合った。
マガナミはオロオロと双方に視線を巡らせる。
「全部聞いた」
シカマルの低い声が響いた。
そのまま黙りこむシカマルの代わりに、アスマが続ける。
意識してわざとそうしているのか、カラッとした明るい声だ。
「ったく、綱手様の機嫌が悪いのなんのって。どう責任とってくれるんだぁ?サワト」
サワトは笑みを作った。
しかしその笑みは固い。
「すみません」
「まあ仕方ねえさ。今回はお前の親父さんが直々に綱手様に事情を説明したこともあって、事は丸く収まった形になってる。気にするな」
気にするな、に込められた意味は深い。
「ボクたち、サワトのおじさんに会ったんだ」
チョウジが顔を上げる。
「おじさん言ってた。ボクたちのことを本当の仲間のように思っていたみたいだって。ボク、サワトの口から聞きたいんだ」
サワトの眉間がピクリと動く。
「ボクたちのこと、仲間だと思ってくれてた?」
チョウジは必死な視線を送る。
サワトはその視線を受け止めるだけで、言葉を発しようとはしない。
「サワト」
そう呼ばういのの声に風が呼応する。
「私たち、あんたに騙されてたの?」
サワトは目に見えてうろたえた。
いのは重ねて問う。
「最後まで、あんたに騙されてたの?」
マガナミは、いのの問いの奥に、サワトへの複雑な心情を知る。
幼少からの友と思っていた人物が、実は故郷への侵入者だった。
大切な人だと思っていただけに、裏切られたという思いは強い。
けれど、自分の記憶は未だ、彼のことを旧知の友と叫んでいる。
記憶と事実の食い違いに感情は混乱する。
そしていのは思う。
彼は今、この状況をどう思っているのだろう。
彼の自分たちへの態度はすべて、任務遂行のための演技に過ぎなかったのだろうか。
自分たちが彼に対して抱いていた、いや、今もなお抱いている友としての感情は、彼にとっては全く意味のない感情なのだろうか。
「最後まで」騙されていたのか?と問う彼女は、それを否定したがっている。
偽りの中にも、僅かばかりでも真実があったのだと信じたがっている。
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