23.サワトとシカマル
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――故郷があるってのはいいもんだなぁ。
出会って間もない頃、サワトがポツリと呟いた台詞を何故か思い出した。
アカデミーに入ったばかりの幼い子どもが、まるで年寄りのような事を言うものだと呆気にとられたのを覚えている。
自分も周囲から同じような評価を受けていたとは、この時は夢にも思わない。
――お前変わってんなぁ。いつもそんなことばっか考えてんのか?
――まさか。ほんの時々。
サワトはさっぱりと笑う。
――普通は時々も考えねーぞ。
――そうかな。
――そうだよ。
サワトは手を頭の後ろで組む。
――だってさ。帰る場所があるんだ。
――帰る場所?家か?普通はあるだろ。
するとサワトは静かに首を振った。
――そんなことないさ。故郷を失って、各地を流れ歩いてる一族だっている。
――ふうん?
あんまピンとこねーけど、そうなのかもな。
とかなんとか、適当な返事をしてその話は終わった気がする。
あの時彼は、一体何を思いながらこの発言をしたのだろうか。
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