21.まるで蕾が開くような
(1/9)
チョウジの怪我はそれほど悪化することなく、数日の入院の後は、自宅療養で構わないということになった。
マガナミの持ってきたソライル草の果たした役割が大きかったことは言うまでもない。
間もなくチョウジは外を出歩けるようになり、傷はほとんど目立たなくなった。
マガナミはいのとともにチョウジを見舞い、二人に礼と謝罪を述べた。
もちろん、あの時待ち合わせの場を離れたこと、自分を探させてしまったことについてだ。
二人は屈託なく、気にするなと笑った。
マガナミは、何度も何度も謝った。
そして、それと同じだけ、ありがとうと言った。
二人の前ではとても素直になれた。
何のためらいもなく、謝罪の言葉も、お礼の言葉も口にできた。
なのになぜ、彼にだけはそれができないのだろう。
マガナミとシカマルは、あれからずっとギクシャクしていた。
互いに目を合わさず、会話をしてもなんとなくよそよそしい。
今までなかった事態に、ヨシノとシカクも何があったのかと首を捻っていた。
「ケンカ?」
アスマは偶然ヨシノと顔を合わせ、その話を聞いた。
「…なんじゃないかと思って。元々会話の多い方じゃなかったけど、ほとんど口きかないのよ」
何かあったのかしら、と浮かない顔をするヨシノを見て、アスマはため息をつく。
原因と言ったら、『アレ』しか考えられないではないか。
処置室のドアから飛び出してきた後、マガナミはそのまま病院の外へ走っていってしまった。
カカシにその場を任せ、今度はアスマがマガナミを追った。
とはいえ、マガナミの行きそうな場所など想像もつかない。
だから教え子たちの行きそうな場所を当たることにした。
その判断は正しかった。
マガナミの姿はそれほど時間をかけずに見つけることができた。
シカマルがいつも寝転がっている例のベンチだった。
彼女はベンチの上で膝を抱えて小さく丸まっていた。
「マガナミ」
声を掛けると、肩が小さく震えた。
ゆっくりと顔をもたげる。
泣いているのかと思ったが、瞳は乾いていた。
「どうした?」
帰ってきたマガナミの手に握られていた草、処置室から飛び出してきた時のマガナミの表情を見れば、何が起こったのかおぼろげながら推測できる。
この不幸な行き違いを思い、アスマはため息を漏らした。
マガナミは黙っている。
アスマは横に腰を下ろした。
(1/9)
*←|→#
[bookmark]
←back
[ back to top ]